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四国(香川・愛媛・徳島)へのUIターン前後の収支とライフプラン

こんにちは。四国の転職エージェント、リージェントの小野です。
前回アップしたブログ「四国(香川・愛媛・徳島)への移住・UIターンにかかるお金の話」では、移住にかかる費用や、都市部と地方での生活費の違いなどについてご紹介しましたが、今回はUIターン前後の収支の違いを踏まえた上で「四国のでライフプラン」について考えてみたいと思います。「UIターンはしたいけど、子どもの教育資金や老後の蓄えなど、お金のことについても考えておかないと・・・」といった漠然とした不安を持つ方に少しでも参考にしていただけたら幸いです。



UIターン前後の収支の違い

【収入】
前回のブログでもお伝えしましたが、弊社で転職を支援させていただいた方のUIターン前後の平均年収は、UIターン転職前で約600万円、UIターン転職後が約480万円と約2割減少しています。そして、手取りを額面給与の80%とすると、毎月の手取りはUIターン前後で「8万円」ほど減る計算になります。あくまで平均であり、UIターン転職後の年収には残業代や手当てが含まれていないため一概に2割減るというものではありませんが、ライフプランを考えるにあたって事前におおよその相場観を把握しておくとプランをイメージしやすくなります。

▼手取りの相場観

UIターン前
の年収
UIターン後
の年収
毎月の
手取りの差
400万円 320万円 5.3万円
500万円 400万円 6.7万円
600万円 480万円 8.0万円
700万円 560万円 9.3万円
800万円 640万円 10.7万円

【支出:日々の生活費】
日々の生活費も詳しくは前回のブログを見ていただければと思いますが、総括すると食費や日用品にかかる費用がすごく減るということはありません。地方移住=生活コストが下がるのではないか、という話を良く見聞きしますが、スーパーや日用品店の値段が都市部と地方で大きく異なることはありません。家庭菜園で農作物を育てる場合も食費は減りますが、その分農業用品にお金がかかったりしますので、一言で「生活コストが下がる」とは言い切れない部分があります。もちろん、スーパーに並ぶ生鮮食品の質が良くなったり、BBQなどを施設利用料をかけずにできるといったメリットもたくさんありますが、コスト面だけを見るとそこまで変わらないというのが実情です。

【支出:住宅費用】
住宅の費用は都市部と四国で大きな差があります。大手不動産情報サイトによると、2LDKの家賃相場は東京都杉並区で平均14万円、香川県高松市で平均6万円なので8万円も安くなります。

また、土地の坪単価は賃貸以上に開きがあります。神奈川県横浜市保土ケ谷区で平均60万円/坪、埼玉県川口市で平均50万円/坪など数十万円することが当たり前ですが、香川県高松市は平均10万円/坪、愛媛県西条市で9万円/坪など、坪単価10万円以下の土地を探すことは難しくありません。親族や知り合いに土地を譲り受ければ、さらに安く土地を手に入れることもできます。建築費も「都市部は狭小地が多く、建築条件をクリアするのにコストがかかる」といった理由で割高になる場合があり、建物自体も地方の方が安く手に入れられるケースが多いようです。

【支出:車関連費用】
公共交通網の発達した都市部では車は不要、もしくは一家に1台で十分ですが、四国は車社会のため大人1人につき車1台持っていることも珍しくありません。税金や車検、保険のコストもかかり、日々のガソリン代や消耗品の費用を考えると年間で1台当たり35万円ほどの出費となります。また、少なくとも10年に1回ほどのペースで買い替え時期が訪れるため、その都度車の購入費が必要になってくることも想定しておかなければなりません。

このようにコストについてだけ書くと車は地方移住のデメリットのように感じますが、車を持つことは「満員電車から解放される」「大きな荷物を簡単に持って帰ることができる」「子どもが大きな声を出しても気にならない」といったメリットもたくさんあります。生活に役立つことは間違いないので、個人的には暮らしを豊かにしてくれる必要な経費だと考えています。

【支出:教育費用】
文部科学省の調査によると、幼稚園から高校までの15年間の学習費総額は全て公立に通った場合で約540万円、全て私立に通った場合で約1,830万円かかります。この学習費は大きく「学校教育費・給食費」「学校外活動費」に分かれますが、「学校教育費・給食費」については幼児教育・保育の無償化や私立高等学校授業料無償化などの教育費負担軽減が進められていることもあり、都市部と地方で差はありません。

一方で「学校外活動費」になると人口規模による差が見られるようになります。例えば公立小学校の場合、市区町村の人口規模が5万人以下の地域は年額15.8万円、指定都市・特別区では年額28.3万円と、倍近い差があります。人口規模が大きい地域ほど世帯年収が相対的に高いということもありますし、周りに塾に通っている家庭が多いと刺激されて塾に通いだす、といったことにもなりやすいのだと考えられます。都市部には私立の学校が多いため、そうした環境の違いからも学校外活動費が高くつく傾向にあります。

大学費用に関しては平均的に国公立大学4年間で約250万円、私立大学で450万円ほどかかります。さらに、下宿代などの仕送り額を毎月10万円とすると4年間で480万円ほどかかることになります。四国は多くの学生が県外の大学に進学するため、仕送りはもちろん、受験のための移動費や引っ越しなどの費用が必要になってきます。場合によっては1,000万円以上もする大きな金額となりますので、大学費用はライフプランを考える上でとても重要な項目となります。

【支出:老後資金】
日本人の平均寿命は85歳ほどなので、65歳で定年を迎えた場合、約20年は年金と貯蓄で過ごさないといけません。総務省によると老後1年間に必要な貯蓄の取り崩し額は夫婦で約100万円なので、20年間で2,000万円。これに家の改修費用や医療費・介護費用などを考慮すると、3,000万円ほど貯めておくことが望ましいと言われています。しかし、夫婦共働きであれば年金額も変わりますし、定年が遅くなれば無職期間が短くなり必要な貯蓄も少なくなりますので、3,000万円はあくまでも目安だといえます。老後の生活をイメージしながら、公的年金で足りないお金はいくらになるのかしっかり検討していく必要があります。

四国でのライフプラン

それでは、UIターン前後の収支の違いを踏まえた上でライフプランについて考えてみます。正確にシミュレーションする場合は「現在の家計収支」「年収の想定推移や退職金の算出」「補助金や税金の洗い出し」などを一つ一つ丁寧に行う必要がありますが、今回は簡易的なキャッシュフローを作成してみたいと思います。

▼モデルケース
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家族構成  :夫婦(共に35歳)・子ども(2歳と0歳)
現年収   :600万円(手取り480万円)
移住後の年収:480万円(手取り384万円)
貯蓄    :300万円
子どもの進学:小・中・高は公立。大学は県外に進学。
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▼キャッシュフロー表(※クリックで拡大します※)



まず、収入については手取り年収384万円から始まり、毎年2%ずつ上がっていくことを想定しています。退職金については退職時の月収の30倍。そこからは再雇用で75%まで年収が下がると仮定します。

次に、支出は主な出費となる「日々の生活費」「住宅費用」「車購入費用」「教育費用」を入れています。「日々の生活費」は毎月20万円で固定。「住宅費用」は移住後3年間は月6万円の賃貸に住み、その後3,000万円の戸建てをローンで購入する計画です。「車購入費用」は移住時に150万円の中古車を購入し、その後は10年毎に買い替えをする予定とします。「教育費用」は幼稚園〜大学までの平均的な費用を在籍年数で等分しています。

このようにざっくりとしたキャッシュフロー表でも、先々お金の必要なタイミングや老後資金の想定が見えてきます。今回の例でいうと、65歳時の貯蓄は2,919万円と必要な老後資金を確保できていますが、一方で子どもが2人とも大学生になるタイミングで貯蓄がマイナスとなってしまいます。この問題を解決するためには収入を増やすか、支出を減らすことを検討しないといけません。収入を増やすという観点で考えると、地元へのUターンであれば「祖父母に子どもを見てもらう」ことで夫婦の就労時間を増やすことが可能かもしれません。また、支出を減らすためには「車を軽自動車にする」「子どもとお金のかからない海や山で遊ぶ」といった工夫で出費を減らすことができるかもしれません。

こうしたキャッシュフロー表は様々なサイトでテンプレートが用意されています。日本FP協会のホームページにも様々なテンプレートが用意されているので、ライフプランを検討される際はチェックしてみてください。(日本FP協会「便利ツールで家計をチェック」)

また、もっと簡易的にライフプランを確認したい場合はWEB上で手軽に作成できるツールもあります。「ライフプランシミュレーション(一般社団法人 全国銀行協会)」であれば5分ほどでキャッシュフローの推移が作成できますので、ざっくりと確認したい場合にとても便利です。最初から完璧に作ろうと思うと気が重くなってしまうので、まずは気楽にプランをイメージしてみるのもいいかもしれません。

お金以外のメリット・デメリットを考える

お金の話をすると、お金のことで頭がいっぱいになってしまいますが、UIターンにはお金以外の変化もたくさんあります。例えば水や食べ物がおいしく、地域で生産された新鮮な野菜や水産物を安く手に入れられるのは地方暮らしのメリットの一つです。子育て世帯からすると、親の手助けが受けられたり、待機児童に悩まされることが少なくなるといった環境の良さもあります。

都会のような刺激を受ける環境は減って消費する遊びは少なくなりますが、一方で自分で生み出していく生産的な遊びを楽しめるようにもなります。例えば、地方は自由にできる空間が広がるため家庭菜園やガーデニング、DIYなどに手を出しやすくなりますし、子どもも野花で色水を作って絵を書いたり、泥団子でお城を作ってみたりと、親が何かを与えなくても自然の材料で遊びを生み出すことができます。

経済的には給与相場の高い首都圏の方が余裕を持った生活ができるかもしれませんが、どんな暮らしがしたいかは人それぞれ様々な価値観があります。弊社にご相談いただく方々もUIターンを決断する背景には多様な事情がありますが、四国だからこその仕事や暮らしに魅力を感じられている方が多いように思います。「自分の送りたい生活スタイルを実現するためにUIターンを考えているが、経済的な不安があって動き出せていない」という方は、是非一度ライフプランを作成してみてください。その上で、現在の生活を続けていくのか、UIターンを実現するのかをしっかり検討していただければと思います。