令和7年度予算案から読み解く「徳島県が目指す新しい未来」
こんにちは。四国の転職エージェント、リージェントの植村です。
皆さんは、お住まいの都道府県が公表している「予算案」をチェックしたことはありますか?予算案は、私たちが納めた税金を元に、暮らしを支え、地域を豊かにするための行政の計画書です。つまり、地域の「未来の設計図」とも言えます。
今回は、徳島県の令和7年度予算案をもとに、徳島が今、何に力を入れ、どのような未来を目指しているのか、その魅力と可能性を読み解いていきたいと思います。
参照:徳島県HP「令和7年度当初予算等の概要」
徳島県が掲げる「未来へつなぐ」3つの重点施策
2025年2月5日、徳島県は総額5,160億円の令和7年度当初予算案を発表しました。この予算案は「安心度UP」(1,533億円)、「魅力度UP」(1,050億円)、「透明度UP」(17億円)という3つの重点施策を柱に、未来へ引き継いでいく新しい徳島の実現を目指すものです。
ではその中から、私が注目した3つのポイントについて見ていきましょう。
①子どもたちの笑顔が未来を創る!新次元の「子育て応援パッケージ」
徳島県は「こどもまんなか とくしま」の実現に向け、すべての子どもが笑顔になれる「新次元の施策」を打ち出しています。
令和7年度のこども・子育て関連予算は245億円と、前年度当初予算比で+43.3%と驚異的な増加となっています。この予算が支えるのは、結婚、妊娠・出産から子育てまで、「切れ目のない支援」を提供する「子育て応援パッケージ」です。
<妊娠・出産サポートの拡充>
妊娠を望む方々を支援するため、不妊治療(生殖補助医療)の自己負担分を実質無償化する「こうのとり応援事業」を推進しています。また、「不育症治療の助成制度」も新たに創設されました。これらの取り組みにより、妊娠・出産を望む方の経済的負担の軽減を図ります。
参照:徳島県HP「徳島県こうのとり応援事業」、「徳島県不育症治療費等助成事業」
<子育て環境の劇的改善>
市町村と連携し、0〜2歳児の保育料無償化の対象を「第1子以降」へ拡大することを掲げ、2025年9月より、徳島市など一部の市町村で無償化が開始されました。実は、市町村独自の保育料無償化に、県が補助金を出す形は都道府県レベルでは初めての取り組みとのこと。この施策は発表時に各種メディアで大きく報じられており、まさに「新次元」の取り組みと言えるのではないでしょうか。
参照:徳島市HP「幼児教育・保育の施設等利用費の無償化について」
さらに、男性の育休取得促進や仕事と子育てが両立できる職場環境づくりを支援する「とくしま『共働き・共育て』応援事業」もスタートしました。男性が、通算28日以上の育休を取得した中小企業に20万円を支給するなど、具体的な奨励金制度を設けることで、夫婦で子育てに取り組む文化の醸成を力強く後押しします。
参照:徳島県HP「『共働き・共育て』応援のための奨励金制度」
②世界との交流が加速!「徳島・国際化元年」と観光・まちづくり
令和7年度は、徳島県にとってまさに「国際化元年」です。近年の国際定期便就航を追い風に、「新たな人流の創出」や「国際交流・関係人口の拡大」を強力に推進するため、徳島・国際化元年関連予算は111億円にのぼり、前年度当初予算比で+95.3%増という異例の伸びを示しています。
<インバウンド誘客の本格化>
国際線の利用促進やインバウンド誘客のため、航空会社への運航支援や戦略的なプロモーションが実施されるほか、インバウンド(訪日外国人旅行者)の誘客や県民向けの海外旅行を企画する旅行会社などへの助成もスタートしました。2025年9月に開始された「徳島県インバウンド等受入環境整備促進事業補助金」の募集もそのひとつです。また、「大阪・関西万博」では、徳島県ブースの運営など、徳島の魅力を国内外に向け広く発信しました。
参照:徳島県HP「徳島県インバウンド等受入環境整備促進事業補助金」、「大阪・関西万博」徳島県公式サイト「徳島県ゾーン(関西パビリオン内)」
<徳島の「食」と「技」を世界へ>
地域商社(徳島県産業国際化支援機構)と連携し、県産品の海外市場への展開にも力を入れます。昨年は、タイ王国工業省産業振興局など、現地の政府機関と産業連携に関する覚書を締結しました。これに基づき、今年も様々なタイの商談会やフェアを積極的に企画・開催しています。
参照:徳島県産業国際化支援機構「タイ・バンコク四国四県連携商談会・フェアの募集について」、徳島県HP「タイ向け『食品・工芸品テストマーケティング事業』について」
<魅力を高めるまちづくり>
「観光振興・まちづくり」に148億円を配分し、徳島駅周辺から眉山を結ぶ「県都とくしまウォーカブル推進事業」や、にぎわいある水辺空間を創出する「新町川水辺空間にぎわい創出事業」に着手しています。さらに、2026年度完成予定の「オロナミンC球場」活用を見据えたNPB公式戦の誘致促進も行う予定とのこと。徳島県は、観光・にぎわい創出に”使える「インフラ整備」にも注力しています。
参照:徳島県HP「県都とくしまウォーカブル推進会議」
③未来の産業を支える「人材確保」と「バッテリーバレイ構想」
県の持続的な発展のためには、生産性や県民所得の向上に繋がる施策への予算配分が不可欠です。特に喫緊の課題である人材確保のため、令和7年度の人材確保対策関連予算は61億円(前年度当初予算比+ 30.3%増)を確保しています。
<若者の県内への定着支援>
「県内就職支援」を柱とし、若者の県内就業を促進するため、「徳島県奨学金返還支援制度」を大幅に拡充。助成対象者を全国枠250名、県内枠50名へと増やし、助成上限額も最大125万円に引き上げるなど、若者が徳島でキャリアを築きやすい環境を整えています(2025年8月1日から募集が開始されました)。
参照:徳島県HP【全国枠】令和7年度徳島県奨学金返還支援制度<全国の大学生等及び既卒者対象>、【県内枠】令和7年度徳島県奨学金返還支援制度<県内の高校3年生等対象>
<働く環境の整備と賃上げ支援>
中小・小規模事業者を支援する「徳島県賃上げ応援サポート事業」では、国の助成金に県独自の上乗せ助成を行い、労働者の賃上げの実現を後押し、また国の助成金の書類作成等に係る社会保険労務士への報酬費用補助も行います。
参照:徳島県HP「徳島県賃上げ応援サポート事業のご案内」
<未来産業の集積(バッテリーバレイ構想)>
徳島県が未来の柱として推進しているのが「バッテリーバレイ構想」です。蓄電池関連産業の集積を図るため、13億円を重点配分。企業の立地促進だけでなく、専門人材を育成する訓練を実施するなど、徳島を次世代産業のハブにするための基盤づくりが着々と進んでいます。
参照:徳島県HP「『徳島バッテリーバレイ構想』の策定について」
徳島県の令和7年度予算案からは、手厚い子育て支援で若い世代を支援し、国際化の波に乗って新たな活気を呼び込み、未来型産業を育て、若者が働き続けられる基盤を創る、という強いビジョンを感じました。
また、全国トップクラスの医師数(人口10万人あたり)を誇りながらも、将来を見据え、「メディカル・ワーケーション(徳島県医療版ワーケーション)」を実施し医療人材の確保に動くなど、ご紹介したポイント以外にもさまざまな取り組みが行われています。
未来への投資を惜しまず、着実に変革を進める徳島県。徳島の未来が今後更にどう変わっていくのか、その可能性に期待は高まるばかりです。