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「四国のために」働くという選択

「何のために働きますか?」と問われた時、みなさんはどんな風に答えますか?
「生活のため」「欲しいものを買うため」「スキルを身につけるため」「社会に貢献するため」など、人によっていろいろな働く目的があると思います。私たちが転職のご相談をお受けする際には、この「何のために働くのか?(=仕事に関する価値観)」を明確にしていくことを重視しています。それは、この「働く目的」こそがキャリアや働き方をご提案していく上で最も重要な要素だと考えているからです。

そうした「働く目的」の一つに「地域貢献」というものがあります。ご相談者の方々には「“地方創生”や“地域活性”に関わりたい」、ひいては「四国のために働きたい」と、地域への想いを語ってくださる方が多くいらっしゃいます。四国に根差し、四国エリアを元気にしたいと考える私たちにとって、こうした「四国のために」という想いを持ってご相談いただくことは大変ありがたく、また、転職先の企業で活躍されている姿を見ると、とても嬉しい気持ちでいっぱいになります。

今日はこの「四国のために」働くという選択について、そして、そうした選択をされた方々の転職事例についてお話していきたいと思います。「四国で地域のために働きたい」と考えている方の参考になれば幸いです。

「四国のために」働くと考えている方々の志向とは?

まず、「四国のために」働きたいと考えられている方々はどんな志向を持っているのか、いくつかご紹介をさせていただきます。

・生まれ育った町への貢献や恩返しがしたい。
・帰省の度に地元の過疎化が気になり始めていて、昔のような賑わいを復活させたい。
・現職のままリモートワークで地元へUターンするよりも、地元企業で事業に直接貢献したい。
・旅行で訪れ四国が好きになる。手袋、オリーブ、庵治石…等、香川の光るものを全国へ知らせたい。
・瀬戸内国際芸術祭で瀬戸内の多島美に魅了される。この土地の魅力を世界に発信したい。

このような方々は、根底には「四国が好き」という想いがあり、“四国を活性化させたい”、“この魅力を四国外の人にも知ってもらいたい”という願いを実現できる仕事に就きたいと考えている方が多いように感じます。



また、より具体的に四国でのキャリア上のメリットを感じ、四国への転職を考えられている方もいらっしゃいます。

・四国は人口減少が全国より約20年、高齢化は約10年早く進行している。その分、社会解決型ビジネスモデルを都会に先駆けて築くチャンスがある。
・都会では当たり前のIT環境が地方では当たり前ではない。培ってきたITスキルを活かして、四国企業のDX化推進に携わり、より影響力や貢献度の高いポジションで活躍したい。
・地方創生への興味から可能性を感じられる地方を模索したなかで、仕事で訪れた四国に興味を持つ。都会での大手企業向けのプロモーションの経験を活かして、四国の様々な企業のプロモーションに携わりたい。

このような方々は、これまで培ってきたスキルを活かして四国の企業の発展に貢献することが、自身のやりがいに繋がっていくと考えている方が多いように感じます。

転職活動を進める際に気を付けていただきたいこと

こうした「四国が好き」「四国のビジネス発展に貢献したい」という志向は、もちろん四国の企業にも前向きに捉えられることが多いように思います。しかし、ひとつだけ気を付けていただきたいことがあります。
それは、実際に企業との面接で転職理由や志望動機を質問された際に、単に「地域貢献をしたい」という回答ではとても抽象的で、面接官に納得してもらうことは難しいという点です。広く捉えると納税しているだけでも地域貢献ですし、ほとんどの企業が地域社会に貢献しているという観点で見れば、「地域貢献したい」という志望動機だけでは、その企業を選んだ理由にならないからです。例えば、以下のような点について、ご自身の中でも具体的な考えを整理しておくことが重要です。

・なぜ地域貢献をしたいと思うのか
・あなたの考える地域貢献とはどのような貢献を指しているのか
・これまでのどのような経験が活かせるのか
・その企業に入社することが、あなたにとってどのように地域貢献に繋がると考えているのか

など、ここまで具体的に考えて明確に伝えられるようにしておくことで、面接官だけでなく、自分自身も納得できる転職ができると思います。

「四国のために」働くことを選択した方々の転職事例

では実際に「四国のために」働く選択をされた方々は、どのような企業に転職して「地域貢献」を実現されているのでしょうか。2名ほど転職事例をご紹介したいと思います。

①リモート勤務の打診を断り、地元企業に転職<30代男性>

これまで磨いてきた技術や経験を、地元企業の課題解決に活かして貢献されている事例です。
子育てが落ち着く50代くらいに四国に戻りたいと考えられていましたが、コロナの影響で家族に会うこともままならず、このまま都会で生活を続けていくというイメージが持ちきれなくなり、Uターンの時期を前倒しすることを決意。現職でのリモート勤務も打診されたようですが、「四国に帰るのなら四国の会社に入社して貢献したい」という想いをお持ちでした。「グローバル×クラウド技術」の知識を身につけ磨いてきたこともあり、グローバル展開を加速させ、社内でクラウド技術の活用を進めたいという企業とご縁がありました。

ご入社後は入社前の印象よりもグローバルで働く機会が多く、「四国でも海外とやり取りする機会が多い」というプラスの意外性があったようです。また、地元密着企業ならではのアットホームな雰囲気があって長く働けそうだと、嬉しいご感想もありました。一方で、地元の駅前や商店街に活気がなくなっているのを見て、「これはまずい」と感じられているようで、一緒に地元を盛り上げていきましょう!と熱意を持ってお話されていたことが印象的です。地元を盛り上げるという意味では、本業に支障をきたさない範囲で、「副業として、地元企業でこれまでのスキルが役に立つところはないか?」というご相談もあり、四国のために積極的に貢献されようとしています。

②四国のまちづくりに貢献<30代女性>

不動産や建築、インフラなどのストックビジネスの領域で地域活性への貢献を考えられた事例です。大学卒業後、東海で長く不動産会社に在籍して、主にプロパティーマネジメントとして賃貸物件管理に携わっていましたが、自身の将来設計やご両親のことを考えUターンを決意されました。ストックビジネスである不動産管理の仕事にやりがいを感じていて、今後は地元に根付いて、故郷の活性化に貢献したいという思いをお持ちでした。現在は、地域のストックビジネスに関わる企業とご縁があり活躍されています。

30代後半で入社をされ、ご入社後2年で課長代理に昇格。そして、年間優秀営業賞も獲得するなど、中途社員でもしっかり評価してもらえる環境に喜ばれていました。それまでの16年にわたるプロパティーマネジメントのご経験を活かして、今度は地元の賃貸物件オーナーが所有する物件の収益を最大化させるという役割を担い、まさに地域活性に貢献されています。「賃貸物件1棟まるごとの売買など、これまで経験のなかった仕事もさせてもらえるようになり、とても充実しています!!」という嬉しいご感想もありました。

最後に

私自身も長く関西で求人広告の仕事に携わり、「“人”で関西を元気にする」をスローガンに掲げていた組織で、雇用を創出するという貢献感にやりがいを感じていました。次第に年齢を重ねるごとに、同級生が地元に戻って貢献していたり、経営者になっていたりと、四国を盛り上げようとしている姿を目にするようになり、「“人”で四国を元気にする」ということが実現できたらどんなに嬉しいだろうと思うようになりました。その後、「四国のために」働くという選択をして今に至ります。

四国に戻って間もなく10年の月日が経ちます。今は求人広告ではなく、キャリアコンサルタントという立場で、四国へのUIターンを希望される方々からのご相談をお受けして人生の大きな転機に関わらせていただき、そして、四国の企業とのご縁をお繋ぎするという役割を担うことで、「四国のために」働くことが実現できていると感じています。あるご相談者から、「関西の企業への未練はないですか?」とご質問を受けたことがありますが、「未練はありません」と回答しました。もちろん、私を受け入れて育ててくださった関西の企業には感謝しかありませんし、“人”で地域を元気にすることができる、と実感できた経験は私にとってはかけがえのないものでした。今はその経験を活かして、四国に貢献できていることに心から幸せを感じています。

今は、自由に住む場所や働く場所を選べる時代。今回のブログが、みなさんが「どこで、何のために働くのか」を考える際の一つのきっかけになりましたら嬉しいです。


筆者プロフィール

国家資格キャリアコンサルタント

溝渕 愛子Mizobuchi Aiko

高知県高知市出身。大学卒業後、総合リース会社に就職。地元の高知支店に配属されリース営業に従事。その後、大阪に転居し、株式会社リクルートに入社。HRカンパニー関西営業部の新卒・キャリア採用領域で企業の採用活動をサポート。また、派遣領域では関西・中四国エリアの派遣会社への渉外業務に従事。四国へのUターンを決意してリクルートを退職。香川県の人材サービス企業に転職し、管理部門にて、社員の労務管理、新卒採用活動に従事。その後、株式会社リージェントに入社。今ハマっているのは、限られた自由な時間を有意義に過ごすこと。1日にジャンルの異なる数冊の本を、少しずつ読むことを楽しんでいる。