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香川へのUIターン転職事例から考える「女性のキャリア」

結婚・出産・育児といったライフステージの移り変わりによって、女性の生活環境やキャリアへの考え方は大きく変化することがあります。今の仕事にやりがいを感じつつも、「ライフステージが変わっても、仕事を続けられるのだろうか」と不安な思いをお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。今回はUIターン転職における「女性のキャリア」について、実際に香川県に移住された方の事例を交えながらお話ししていきたいと思います。

UIターンにおける「働く環境」のメリット

①Aさん(転職当時32歳/東京から香川へのUターン)
まずは、大都市圏での長時間にわたる電車通勤から解放されて、子育てにおいても親のサポートが受けられるようになったというAさんの事例を紹介します。

Aさんは新卒で入社した大手通販会社でイベント企画業務を経験した後、転職してシステム会社の人材開発部門で新卒採用業務に携わっていました。裁量権を与えられる仕事にやりがいがあり、毎年100名弱の新卒採用を担当して会社説明会のために全国を飛び回っていましたが、結婚後、第一子を出産して1年間育休を取得。育休からの復帰後の2年間は時短勤務が許されるとのことで残業や出張の配慮がありましたが、時短勤務の2年間が過ぎた後は元のフルタイム勤務に戻ることになっていました。子育てをしている状況で、残業や出張が発生する働き方は難しいと悩んだ末、弊社にご相談をいただきました。

元のフルタイム勤務に戻り、毎日往復1時間半の電車通勤と、その後自宅から自転車に乗り換える時間を考えると子どもの保育園のお迎えには到底間に合いません。夫婦で話し合い、お互いの実家がある香川へUターンすることを決意されました。現在は、地元の不動産会社に人事職として入社し、これまでの採用業務の経験を活かして毎年数十名の採用活動に奮闘されています。フレックスタイム制度を利用して定時に退社し、車での通勤が可能になったため、今は仕事の帰りにそのまま保育園に直行して子どもを迎えに行くことができています。また、近所に住むご両親にサポートしてもらえる環境であるため、採用活動がピークになる時期でも、仕事のやりがいと子育ての両立を叶えられています。



②Bさん(転職当時41歳/東京から香川へのIターン)
もう一名、「働く環境」のメリットを感じている方の事例をご紹介します。北陸出身のBさんは、大学は法学部を専攻し、卒業後は石川県の企業で社内法務としてのキャリアを歩まれていました。弁護士折衝やコンプライアンス対応など順調に経験を積んでいましたが、結婚と同時にご主人の転勤で東京に転居することになり、止む無く退職。その後、転職活動を始めた時に妊娠がわかり転職活動も中断。双子の子どもを授かりましたが、東京では双子を同時に保育園に預けることがなかなかできず、8年間働くことができませんでした。その後、ご主人の出身地である香川に移住することを決めて弊社にご相談をくださいました。

法律を通して企業や個人を守る、という責任あるミッションにやりがいを感じるような、本当に仕事が好きな女性で「子どもさえ保育園に預けられたら自分もバリバリ働きたい・・・」と考えられていました。一方で、8年間ものブランクがあって本当に仕事は見つかるのか、過去のキャリアをしっかり活かすことができるのか、といった不安も抱えていました。そこで、これまでの経験をしっかりと棚卸ししていただくと共に、8年間のブランクがなぜ発生したのか、明確に説明できるよう一緒に整理をしていきました。そうした事前の準備もあって無事に転職先が決まり、現在は香川のインフラ関連会社で企業法務としてキャリアを積み、家庭とのバランスを維持されています。

Bさんのように、ご主人の転勤により退職を余儀なくされることや、場合によってはご主人の転勤の度に転職をして転職回数が増えてしまう、といった方が割といらっしゃいます。また、なかなか子どもが預けられず、働けないブランク期間が長期化してしまったというケースもよくあります。そうした場合は、企業に対して転職回数やブランク期間が発生した事情を丁寧にご説明しながら、過去の経験やスキルをしっかりアピールして、時間の制約がある中でも能力が発揮できる職場を我慢強く見つけ出していくことが大切になります。



UIターンにおける「キャリア」のメリット

③Cさん(転職当時29歳/大阪から香川へのUターン)
地方にUIターンすることでキャリアの可能性が狭まるのではと感じられている方も多いのではと思いますが、逆にUIターンしたからこそ「やりたかった仕事に携わることができた」「地方だからこそ、これまでのキャリアを活かすことができた」といったメリットを感じられている方もいます。

グローバルに活躍したいという思いで、大都市圏の大手メーカーで人事職としてキャリアを築いたCさん。主に採用や育成に関わり「現場に近い場所で新人の成長を裏から支えること」にやりがいを感じていました。一方で、グローバルに活躍できるチャンスにはなかなか恵まれず、「あと3年くらい待てば海外に行ける」と言われたものの、今後の結婚や出産などのライフイベントを考えると、いつ実現できるかわからない海外赴任をいつまでも待つことはできない、と考えていました。大企業はチャンスも多い分、社員数も多く、自身の希望通りのタイミングで思い描くキャリアを実現するのは難しい・・・。そんな中、Cさんはケガにより数ヶ月実家のある香川からリモートワークをしたことをきっかけに、地元へのUターンを意識するようになり、弊社にご相談をいただきました。

現在は香川にUターンし、高い海外売上比率を目指すグローバルメーカーで海外駐在員のフォローや、海外現地法人に関わる人事業務に携わっています。入社後、Cさんは「女性がキャリア形成を見据えながら働き続けるには、自身だけでなく周囲からサポートしてもらえる環境があるかどうかも大事」と話してくれました。現在は、地元で両親や頼れる友人が周囲にいることで、様々なライフイベントを迎えながらもしっかりキャリア形成ができるという安心感を持って働くことができています。



④Dさん(転職当時34歳/東京から香川へのUターン)
もう一名は、Uターンして「小回りの利く組織で、お客さまに近いところで働きたい」という希望が叶えられたDさんの事例をご紹介します。

Dさんは大手金融関連企業でWEBサイトの企画に携わっていました。深夜まで働くハードワークを乗り越え、「Dさんに任せれば何とかしてくれる」という社内からの高い評価を受けて新規サービス立上げのプロジェクト責任者に抜擢されるほど活躍されていました。一方で、様々な部署からの意見への対応や経営会議の資料作成などにほとんどの時間を費やすようになり、「もっとお客さまの近くで、お客さまの目に触れるところに労力をかけて仕事がしたい」と考えるようになります。そんな時に、香川へのUターンを検討し始めて弊社にご相談くださいました。

「東京に本社があり香川に支店がある会社よりは、香川に本社がある会社でビジネス戦略に関わりたい」という希望があり、現在は地場の広告代理店で地域全体の様々なビジネスに関わり活躍されています。入社後、Dさんは「大企業の場合は分業されていて一人が1つの仕事に特化するケースも多いですが、地方の企業だと、様々な企業の様々な案件に関わって幅広い仕事に携わるようになるので、とてもやりがいがあります」と話してくださいました。組織が大きくなると仕事のスピードが下がってしまうことや、顧客への直接の貢献感が得られにくくなることがありますが、地方の企業は経営者との距離も近く、地場に密着して顧客に近いところで働くことが多いので、貢献感を得やすくなるのかも知れません。



さいごに

今回は、UIターンにおける「女性のキャリア」について、事例を交えてお伝えしてきました。女性がスキルや個性を十分に活かして働ける社会づくりを目的に制定された「女性活躍推進法」が2016年に施行され、各企業で女性が活躍できる職場環境の整備が進んでいますが、まだまだ「女性が働きやすい会社が増えた」とはいえない現状があります。実際に、ご相談をくださる女性の方々は、様々なライフステージでご自身のキャリアを諦めてしまっている方も多いと感じています。私はキャリアコンサルタントとして、そして同じ女性として、どんな女性も思い切り働いてほしい、自分のキャリアを諦めてほしくない、という思いがあります。母として、妻として、子として、人生の様々な局面で訪れるいくつもの役割をもつ女性が、自分らしく、輝きながら人生を歩んでいけるようにお手伝いさせていただきたいと思っています。このブログが、UIターン転職を検討されている女性の皆さまの背中を押すことができるきっかけになりましたら、こんなに嬉しいことはありません。


筆者プロフィール

国家資格キャリアコンサルタント

溝渕 愛子Mizobuchi Aiko

高知県高知市出身。大学卒業後、総合リース会社に就職。地元の高知支店に配属されリース営業に従事。その後、大阪に転居し、株式会社リクルートに入社。HRカンパニー関西営業部の新卒・キャリア採用領域で企業の採用活動をサポート。また、派遣領域では関西・中四国エリアの派遣会社への渉外業務に従事。四国へのUターンを決意してリクルートを退職。香川県の人材サービス企業に転職し、管理部門にて、社員の労務管理、新卒採用活動に従事。その後、株式会社リージェントに入社。今ハマっているのは、限られた自由な時間を有意義に過ごすこと。1日にジャンルの異なる数冊の本を、少しずつ読むことを楽しんでいる。