INTERVIEW2022.11.16

ワークライフバランスと、世界での活躍は両立できる。ー(株)トップシステム・森達雄氏ー

INTERVIEW2022.11.16

ワークライフバランスと、世界での活躍は両立できる。ー(株)トップシステム・森達雄氏ー

愛媛県西条市に本社を置き、世界市場をにらんだビジネス展開を推進する、医薬品製造装置メーカーのトップシステム。同社は、社長の森達雄氏が1999年に独立して起業した会社です。森氏は企業規模がまだそれほど大きくない時期から積極的に海外に出向いては、自らのノウハウや人的ネットワークを駆使して顧客のニーズに合った提案を行い、事業を成長させてきました。世界56ヶ国、約270の都市に足を運んだという、グローバルビジネスの最前線で活躍してきた森氏の眼に、四国で働くことの価値や可能性はどのように映っているのでしょう。

29歳で地元にUターン。ノウハウを蓄積し、39歳で起業。


松本
トップシステムは森社長が立ち上げられたとのことですが、起業の経緯や、ターニングポイントをお聞かせください。
私の出身は、愛媛県西条市です。子どもの頃から機械いじりが好きで、高校は工業高校の機械科に進みました。多くはそのままメーカーなどに就職するのでしょうが、私はもう少し幅の広い分野を学びたくて、九州の大学へ行きました。

卒業後、最初に就職したのがミノルタ(現・コニカミノルタ(株))です。OA機器等の営業として6年働きました。仕事に不満はなかったのですが、29歳の時、父親が急逝しましてね。そうなると「やはり地元に戻った方がいいのか」など、いろいろ考えることが出てきて。

その頃、西条で製造請負業の社長に出会いました。自らは製造設備を持たず、顧客からオーダーを受けると自分の社外ネットワークを使って製品を製造し、顧客に納品するということをやっていたんです。
社長が注力していたのは半導体製造に関する装置や部品で、アメリカに営業に行って商談をまとめたりしていました。社長の考え方も魅力的だったし、当時の半導体産業と言えば日本が世界の最先端で、業務内容にも惹かれました。営業部隊は6~7人、年商8億円とミノルタとは比較にならない規模の会社でしたが、転職を決意しました。

同社の営業として、主に半導体製造装置の分野を担当しました。良いものを作る素質はあるが、営業力や管理部門がないというメーカーに行き、工程管理や原材料調達について提案する、といった仕事です。海外にもよく行きました。台湾や韓国、アメリカに行って展示会を開催しては、ネットワークを築くのです。
当時は世界ナンバーワンの日本の半導体産業に追いつけ追い越せと、台湾・韓国のメーカーは必死でした。そういった工場に足を運び、様々なサポートを行ったりもしました。自社の韓国法人立ち上げをやったこともあります。

10年お世話になり、原材料調達や加工など、ものづくりに関するノウハウや人的ネットワークがだいぶ身につきました。これを基盤として、自力でやってみたいと思うようになったんです。それで1999年、独立してトップシステムを起業しました。39歳の時です。


松本
当時、既にバブルは崩壊し、日本では金融危機なども叫ばれていた頃です。起業に不安はなかったのですか?
半導体産業は、なお日本が優位にありましたから。日本のプレゼンスを使って台湾や韓国で物を販売することは可能だろうと。それだけの人的ネットワークを築いていましたから。
松本
創業時は半導体分野で事業を始められたのですね。
前職と同じく、自分ではものづくりを行わず、ニーズに応じて必要な物を調達し、いろんな会社にものを作ってもらって販売、ということをしばらくやりました。
しかしそのうち、品質が担保できないという問題が顕在化し始めたのです。やはり自社で作らないと管理できないな…と感じ、2002年に西条市ひうちに工場を設立。ここからが、トップシステムの本格的なスタートと呼べるかもしれません。

医薬品製造装置分野へ転換。多様な人材が集まったおかげで、成長が加速。


松本
事業領域としては、やはり半導体の分野ですか?
半導体業界には、シリコンサイクルというものがあります。忙しくなるとガンガン設備投資を行うのですが、サイクルの谷間が来ると、それは一気に3割程度まで落ちてしまうのです。その浮き沈みに耐えられるだけのキャッシュフローを準備することの大変さには、既に気づいていました。
そこで、徐々に業態転換を図りました。着目したのは医薬・ライフサイエンスの分野です。
松本
全く違う分野のように思えますが、そのような転換が可能なのですか?
半導体と医薬という最終的なプロダクツは全く異なっても、その製造装置はよく似ています。共に特殊なクリーンルームの中で稼働する設備であり、耐食性の高い原材料を用いないといけない。工程も特殊。だから業態転換を図れる見込みがあったのです。
おまけに医薬・ライフサイエンスは、人間が充実した人生を送る上で不可欠であり、生活の基盤ですからね。安全な薬を自国で開発し、海外に輸出できる国というのは、決して多くありません。日本は、数少ないそうした国の一つで、海外に対するアドバンテージもあります。
そのような様々な状況を勘案し、医薬にどんどんシフトさせたのです。結果、起業から7~8年で、半導体関連はほぼゼロになりました。

ものづくり体制にも力を入れました。最初は下請けとして、言われるままに製品を作るしかありませんでしたが、設計者を採用し、設計部門を強化。ものづくりの上流工程から関われるようになると、担当領域が広がりました。
すると徐々に、元請け、すなわちゼネコンや大手の製薬会社と直接商談を行える立場になったのです。顧客のニーズを聞き、期待に応えるため開発・設計部門をさらに充実させました。システムエンジニアやメンテナンススタッフも確保し、やがて開発からメンテまで一貫して対応できる体制が整いました。
時代のニーズとともに変化してきたことで、トップシステムは成長できたのだと思います。
松本
顧客ニーズ、時代のニーズに応じて、人材を揃えていった点が大きかったですね。


当社は、西条市に本社を置く会社ながら、実は地元以外の出身者が多いんです。北海道から種子島まで日本全国から来てくれていて、6割が地元以外。1割は外国人も活躍しています。女性が多いのも特徴で、約3割を占めます。メーカーでこの割合は、だいぶ多い方ではないですか。

様々な経験を持った人間が、多彩な角度から意見を交わす。この多様性は当社の大きな特徴であり、強みでもあると思います。これからも学歴とかバックボーンにこだわらず、多様な人材を集めていきたいし、そうした人々が「面白い」と感じる会社でありたいですね。
女性もガンガン増やしますよ。医薬品の製造装置にはバリデーションという、装置の安全性、安定した稼働を科学的に実証するデータを揃える業務があります。きめ細かさと厳格さを要求されるこの業務で、多くの女性が能力を発揮してくれています。女性の方がいろんな意見をズバズバ言ってくれるので、むしろありがたいですね。

グローバル、SDGs、IoTをさらに進め、明日へとつないでいく。


松本
2019年には創業20周年を迎えられました。ホームページ等も刷新されたとのことですが、どんな思いを込められたのですか。
ホームページでは「明日をつなぐ、をカタチに。」というメッセージを発信しています。これは若手を中心に考えてもらったものです。部署を超えて、いろんな若手が集まって知恵を出し合いました。私は決まった後に見せてもらったのですが、トップシステムの姿勢を示す、次の20年を背負う若手たちらしいスローガンになっていると思います。
松本
事業、会社の今後についてはどうとらえていますか。
最重要の課題は、グローバル展開の加速化です。
国の経済があまり豊かでない時代は、人はまず食べ物を求めます。しかし経済が活発化するうち、家電を揃え車を買い、食べる物も高タンパクになります。この頃になると健康に留意する人が増え、医薬・ライフサイエンスについての関心も高まっていきます。つまり医薬・ライフサイエンスとは、国の成長とともに発展する分野なのです。
中国は必ず発展すると見て合弁会社設立など早くから関係強化に動いていましたが、見込み通りになりました。次はASEANですね。域内人口7億、平均年齢20代のポテンシャルは極めて大きいと思います。

海外展開を進める上で、SDGs、ESGへの取り組みは待ったなしでしょう。欧米の基準に合わせ、脱炭素社会に即した設備を作っていかないと、世界でのビジネスは成り立ちません。
もう一つ、注力したいのがIoTです。医薬品製造は厳しいレギュレーションの中で行われており、ここに携わる人々は強烈なストレスにさらされています。70トンの薬液に10gの素材を添加し忘れただけでも、70トンが全量廃棄になってしまう、というのが当たり前の業界ですから、それも当然でしょう。
IoTで工程を自動化・見える化すれば、人々のストレスはかなり軽減されるはずです。医薬品製造装置を提供する会社として、何としても実現しないといけません。

四国はワークライフバランスをエンジョイできる地域。


松本
愛媛県西条市に本社を置きながら、全国、世界を見据えて事業を推進する森社長ですが、そんな社長は「四国ならではの働く価値」についてどのように考えておられますか?
大都市圏と比べ、情報や事業コストの面で四国にハンデがあるのは否めません。
ただ人材の点で言うと、他と比べ大きく劣るわけではありません。ここでがんばりたいという人もいるし、いろんな事情で地元に戻りたいという人もいる。そういった方々の受け皿が必要だということはひしひしと感じます。
少なくとも当社に来れば、多様性を尊重する環境の中で、自分の個性を発揮できる。あるいは「グローバルに活躍したい」と考える人の期待に応えることはできます。女性が当社のコアとなって活躍する姿を見て、がんばってみたいと思う女性もいるでしょう。
地元にはユニークな企業があります。それぞれが独自の技術を生かし、あるいは世界を相手に事業を行っています。そういった企業に目を向けると、四国に来て仕事をする意義が見出せるのではないでしょうか。
松本
四国へのUIターンを考えている人へ、メッセージをお願いします。
四国に来ると、ワークライフバランスはエンジョイできますね。当社には60歳を過ぎて仕事するエンジニアもいます。80歳を過ぎてもなお現役のエンジニアも活躍しています。彼らには製造現場の指導をお願いしているのですが、よく「職場のすぐ近くに海があって山があるという環境はとてもいい」と言ってくれますね。都市部だとどこに行くにも時間がかかりますが、四国なら自然の遊びはすぐそばですから。仕事とともに、趣味・余暇が充実するというのは、若手や中堅にとっても、長い人生を見渡した上で良い選択ではないでしょうか。
もちろん、仕事だってバリバリやれます。語学とコミュニケーション能力を磨いておけば、世界を相手のビジネスなんて、別に東京でなくてもできますよ。
松本
私たちもトップシステムのような、多様性の中で個性を発揮できる会社をUIターン志向者に提示し、選択の幅を広げてもらえるよう努力していきたいと思います。
本日はありがとうございました。

森 達雄

(株)トップシステム 代表取締役

1960年生まれ。大学を卒業後、ミノルタ(株)(現・コニカミノルタ)に入社し、OA機器等の営業を担当。1989年、地元の製造請負業の会社に転職。半導体製造装置の営業として海外にも頻繁に足を運ぶようになる。1999年に独立し、トップシステムを起業。当初は半導体製造装置分野だったが、徐々に医薬品製造装置分野に事業転換。国内はもちろん、中国、ASEANでの展開を視野に入れている。

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