自然に恵まれた、ちょうど良いサイズの街
- 松本
- まずはDさんのプロフィールから教えてください。
- D
- 私はもともと香川出身で、大学で四国の外に出て、最初に就職したのが東京のパッケージソフト開発会社でした。ベンチャーのような会社だったのですが、そこで4年働いた後、別のシステム会社に転職。その会社はNTTデータグループと協力関係にあったため、私もNTTデータの仕事に携わるようになりました。30歳前後で再度転職したのが、前職のNTTデータ フィナンシャルテクノロジー、当時の社名でNTTデータシステム技術と言っていた会社です。ここで約20年働きました。その後、四国にUターンする形でNTTデータ四国に転職しました。

- 佐々木
- NTTデータ四国にUターン転職することになったきっかけは何でしょう。
- D
- 8年前に結婚し、子どもを授かりました。そして妻と今後について話し合ったんです。互いの両親のことや子育てを考えると、地元に戻った方がいいんじゃないか、と。何より私自身、香川に愛着がありました。帰ってきたい気持ちはずっとありつつ、経験を活かせる仕事があるかどうかわからなかったため、踏み出せずにいたのです。香川にもIT企業があるのは知っていましたが、仕事や待遇、職場環境についての詳細な情報がなかったことが動き出せない要因でした。しかし、子どもが生まれた今こそ最善のタイミングではないかと感じ、香川へのUターンの検討を具体的に進めました。その中で、NTTデータ四国の社長として三木さんが赴任されていると知り、前職で間接的に関わりもあったため、これは何かの縁ではないかと感じました。これまでの経験が活かされる形で四国に戻れるのであればと選考を受け、転職する形となりました。
- 松本
- 次にSさんのプロフィールをお聞かせください。
- S
- 父が転勤族で、小さい頃は青森や名古屋、千葉などを2~3年おきに転々としていました。中学1年で札幌に引っ越してからは、大学卒業までずっといました。
就活時、一度は東京に出てみたいという気持ちがあり、東京のITコンサルティング企業に就職。社員2,000人くらいの大きな会社で7年、システム開発の仕事を一通り経験しました。仕事はすごく充実していたのですが、入社して5年目くらいから「もう少し余裕をもってゆったりと暮らしたい」と思い始めたのです。そこで、もう1年この生活を続けて、今の気持ちが消えなかったら移住を考えようと決めました。その後の1年間、いろんな人に今後のキャリアについて相談したところ、やはり東京を出たいという思いが変わらなかったので、本格的に移住先を探しました。
どこがいいだろうと調べる中で、瀬戸内が目に止まりました。取りあえず旅行に出て岡山、松山、高松あたりを見て回ったのですが、そこで出会った高松港の景色に一目惚れ。その瞬間、ここに住もうと決めました。
前職がフルリモートOKの会社だったので、転職せず移住、という選択肢もありました。しかしそれでは理想の暮らしにはならないという思いもあって、転職活動を始めたのです。NTTデータとは前職の仕事で関わったこともあり、スマートに仕事をされる社員の方々が多いという好印象を持っていました。そのグループ会社であるNTTデータ四国であれば、四国の暮らしとキャリアの両方の理想が実現できるのではと感じました。 - 佐々木
- 5年目で「東京はもういいかな」と感じられた理由は何でしょう。
- S
- 仕事は楽しかったし、プライベートでもいろんなところに行って遊んで。でも、ちょっと全力でやりすぎたのかもしれません。仕事もプライベートも忙しくて、自分を顧みる時間はありませんでした。これでいいんだっけ、と思い始めて。
- 松本
- 暮らす場所を決めるポイントはどのようなところだったのですか?
- S
- その時は、新しい場所に行ってみたいという気持ちの方が強かったですね。高松港に着いて、景色を見渡す中で、いつも東京で見る空よりもなんて広いんだろうと感じたことが印象的でした。海も山も近く、ここでなら理想の暮らしができる気がしたのです。移住して9ヶ月くらいですが、休日にふと空や海や山を見に行くと、「来てよかった」と実感します。普段の疲れが癒される気がします。
- 松本
- Dさんはいかがでしょう。久々にUターンされて、地元の暮らしに感じるところはおありですか。

- D
- 私は屋島に住んでいるのですが、見慣れた景色は懐かしいし、落ち着きますね。東京にいた頃は高い建物が多いので、空を見る機会すらほとんどありませんでした。だからSさんの「空が広い」という感覚は、よく分かります。開放的で、自然に恵まれて、ちょっと車を出せば病院もショッピングモールも近い。生活するにはちょうどいいサイズの街です。
仕事最優先でない、バランスの良い人生を実現したい
- 佐々木
- お二人とも東京でキャリアを積み上げていらっしゃいましたが、地方に来ることで、そのキャリアはどうなるだろう、といった不安はありましたか。
- S
- 東京にいた時は、とにかく仕事第一でした。でもそれでいいのかと疑問が湧き、仕事だけではなく、他の要素とのバランスを見直そうと思ったことが、移住・転職につながっています。ですので、キャリアがどうなるという不安自体は特に感じていませんでした。また、四国に来てもキャリアアップを諦めた、という感覚は全くありません。NTTデータ四国にもいろんなミッションがあるし、学べることもチャレンジしたい課題もあります。それらと向き合いながらも、暮らしも大事にしたいのです。
- 佐々木
- Dさんはいかがでしょう。
- D
- 私は50歳なので、若い頃とは仕事に対する見方が変わってきています。自分のキャリアの不安ということではなく、せっかく地元に帰るのだから、東京で積んできた経験や知識を地元の若い人に伝えていきたい、そんな気持ちをもって四国に戻ってきました。
高松に帰って改めて思うのは、ポテンシャルの高い人がたくさんいる、ということです。でも多くの人が「香川には魅力的な仕事がない」と大都市圏に出てしまう。魅力的だと感じる仕事が地元にあると分かれば、ここでがんばりたいと考える人も出てくるのではないかと感じています。 - 松本
- これまでの転職の時の動機とはだいぶ心持ちが変わったということでしょうか。
- D
- これまでの転職は「キャリアを積みたい」という考えで動くことが多かったですね。様々な領域のシステムを扱うことだったり、より高度なシステムの上流に関わるようになりたいと考えたりと、キャリア優先の選択をしてきました。途中Uターンを考えたこともありましたが、情報がなく選択肢にあがることが当時はありませんでした。
- 佐々木
- 三木社長はお二人に対し、どんな期待をお持ちですか。
- 三木
- 一番は、入社して二人が感じることを大切にして、気づきをぜひアウトプットして欲しいと思っています。どうしても1つの組織の中で長年やっていると、おかしなことや非効率なことがあっても気づき辛くなっていきます。何か感じることがあればぜひ遠慮なく言ってもらいたいですね。
- S
- 以前の会社だと社長と話す機会はほとんどなく、この会社に来て社長と話せる機会があることが大きな変化でした。オフィスで会うと社長も気軽に話しかけてくれるし、風通しの良さを感じます。会社に馴染むのも早くて、変な垣根などはありませんでした。プロパー社員の7年目研修にも同じ社会人7年目として参加することになったのですが、拠点や部門が違う方とも交流するきっかかがあり、同期という意識も加わったことで親近感が増し、コミュニケーションがとりやすくなっています。
- D
- NTTデータ四国は250人くらいなので、社長と直接話ができる。現場の社員が社長に意見を言えるというのは、会社の長所だと思います。
- 佐々木
- 仕事の感覚は都会で働いていた頃と変わったところがありましたか?
- S
- それはあまり感じません。お客さまの要望を聞き、それに応えることで信頼関係を築く、というやり方は、首都圏でもローカルでも同じです。
ただ、個々のお客さまの裁量が大きい、と思うことはあります。東京だとたくさんの人がいて、チームで決めていくため、個人の判断が強く反映することは多くありません。お互いIT経験があるので、合意の着地点も予測できます。一方ローカルでは、チームの規模が小さいので個人の意向が反映されやすいし、必ずしもITに詳しい人とだけ仕事するわけではありません。そのため、前提のすり合わせをしっかりしておかないといけない、という印象はあります。

- D
- やり方が固定化されがちになる、とも言えるかもしれません。関わる人間が少ないため、新しい情報に触れる機会が減るでしょうから。そこに「こんなやり方もありますよ」と別のアプローチや価値観を提案するのも、私たちの役目という気がします。
お客さまだけでなく、社内に対してもそうですね。キャリアが浅いと多くのプロジェクトを経験していないため、壁にぶつかった時、判断に困ることがあります。そこに「こうしてみてはどうか」と言ってあげる。今までは違うやり方があるのだと気づけば、選択肢が増えるはずです。 - 三木
- DさんとSさんの所属部署の違いもあると思います。Sさんは、これから大きく育てたいという事業領域に配属しました。だからお客さまとの信頼構築がとても重要になります。一方、Dさんを配置したのは、ある程度成熟した事業領域の部署です。実績はあるのですが、やり方が固定化されている面があるかもしれない。そこでのカンフル剤になってもらいたい、と思ったのです。
ですので、お二人が直面する課題は異なっているはずです。それぞれの立場で経験を活かしながら力を発揮してもらいたいですね。
この規模感だからこその、風通しの良さがある
- 佐々木
- 三木社長から、「経営陣と一般社員の距離を縮め、コミュニケーションの活性化を図る一環として、経営会議の内容を公開している。また社長メッセージを付け加え、自分の考えを社員に伝えるようにしている」とお聞きしました。そういう点について、お二人はどう感じられますか。
- D
- NTTデータ四国は金融、法人、公共と幅広いお客さまを相手に事業を行っています。そうすると、全体像が見え辛くなってしまいます。自分たち以外の部署がどこで何をやっているかわからない、ということになりがちなのですが、経営会議の資料を見ると、その時々で何が動いているのか分かります。今の業務がどういう目標に向かってのものなのか伝わるので、とても良いと思います。
- 三木
- 以前は、なかなか読むだけでは内容の理解が難しい議事録だったんですが、それを管理部門のスタッフが工夫し、専門用語は補足を入れたりして、若い社員が見ても読めるものにしていきました。会社がどの方向に向かっていっているかを幹部メンバーだけではなく、みんなが理解できているということは大事にしたいと考えています。
- S
- 私も議事録や社長メッセージには目を通しています。会社の方向性がわかるし、自分の業務の指針になりますね。プロジェクトがどういう位置づけにあるのか、気になった時にはすぐ確認できます。
風通しの良さで言うと、社内に昼食・休憩用スペースがあるのですが、入社2~3年目の若手と「もっと椅子があったらいいよね」なんて話していたら、「じゃあ私、言ってきます」と、若手の子がその時ちょうど高松に出社していた経営企画部長にすぐ伝えに行って。「気づきや問題を会社に相談しよう」というのが根付いているのだな、と感じましたね。程なくして、椅子が増設されていました。 - 三木
- 「言ってもいいんだ」という安心感が醸成されてきていることをうれしく思います。気づきや問題があったら会社に伝える。会社は、できることに対してはすぐ動く。そういう文化が定着してきたおかげですね。
- D
- そういうことが定着しやすいのも、この規模感の良さだと思います。東京だと組織が大きすぎて自分の立ち位置もわからなければ、隣にいる人のことすら知らない場合も珍しくない。プロジェクトの中で自分が何の役目を果たしているのかわからず、ともすると歯車のような感覚に陥ってしまう。でもNTTデータ四国だと、事業の全体像や方向性がわかるので、自分のミッションがイメージしやすい。歯車の一つ、という感覚はないですね。
- 佐々木
- 四国で働き、四国で暮らすことの魅力、四国ならではの働く価値について、みなさんはどう考えられますか。

- D
- 仕事の刺激のみを考えると、都会を選ぶ人は多いと思います。しかし、東京は働く場所、遊ぶ場所ではあっても、生活する場所ではないと、特に結婚してから感じるようになりました。自分の時間の全部が仕事のためにあるわけではありません。家族と暮らす、家族との時間を大事にすると考えた時、四国はとても良い環境です。地元に戻ると、通勤時間が短いせいか、一日が長くなった気がします。給与や待遇は都会の時と同じというわけにはいかないかもしれませんが、一方で家賃や生活にかかるコストなどは安くなります。差し引きすると私にとってはメリットの方が大きかったです。
- S
- 私が香川に移住すると言った時、東京の友人や同僚のほとんどの人が驚いていましたが、1割くらいの人から、「いい決断をしたね。私も瀬戸内に行ってみたい!」という反応がありました。私が感じていたように、今の生活に疑問を感じ、地方で暮らすという選択肢を想像している人が意外と多いのが現実ではないかとも感じました。また、移住先を考えた時、瀬戸内を挙げる人は結構いるんじゃないかと思います。今はフルリモートも可能だし、仕事がないから移住できないと思い込まず、探せば必ず見つかるのではないでしょうか。
- 三木
- NTTデータグループには9社の地域会社がありますが、地方の売上は順調に伸びています。今後、地域において価値の高い仕事がどんどん増えていくし、待遇も上がっていくでしょう。そういう意味では、四国の価値は、安穏にあるのではないか、と私は感じます。生活費はそこまでかからないし、気候は穏やかで災害も少ない。一息つきたくなったら、穏やかな海が目の前に広がる。安らかで穏やかな毎日があるというのは、何にも代えがたいですよね。
- 松本
- 敢えて四国で働くことの課題を挙げるなら、何だと思われますか。
- S
- 仕事でがんばっていくぞと思うなら、東京はいいですよね。刺激も多いし、経験になることがたくさんあるのは確かです。ただ一方で、四国に残りたい人にやる気がない、というわけでもなく、意欲は同じように持っているはずです。そういう人たちに、やる気を発揮してもらう環境が整っていけばいいですね。オンラインでどこでも仕事はできるようになっているので、東京と香川との仕事の差が小さくなれば、四国に残る人、戻って来る人も増えるんじゃないでしょうか。
- D
- がんがんやりたい人が東京を目指すのはいいとして、片道切符になってしまうことが問題だなと感じます。四国にもやりがいの持てる仕事はある、ということが伝わってないので、そこはアピールする必要があるかもしれません。「四国にもこんなミッションやポストがあるので、何年か経験を積んだら戻っておいで」という発信がたくさんあがってくると、四国でキャリアを積むことを前向きに考える人も増えるのではないかと思います。
- 三木
- NTTデータ四国の中でも首都圏で開発などの業務に携わっている社員が複数名います。いずれは四国に戻り、NTTデータ四国における地場ビジネスのコアメンバーとして関わってもらいたいという期待がありますが、様々な事情で首都圏から四国に戻れないケースがあります(苦笑)。極力そうならないためにも四国に戻ってきた後のキャリアやミッションをしっかりと明確に伝えていくことも大事な役割だと感じました。

- 佐々木
- 知らないものは選択肢になりようがないので、四国で働く価値や魅力をまずは知ってもらうということがとても重要ですね。Uターン、Iターンそれぞれの視点も交えながら、とても貴重な意見をお聞きできました。本日はありがとうございました。
当社が運営する転職支援サイト「リージョナルキャリア」にて、(株)NTTデータ四国 代表取締役社長 三木隆弘氏の取材記事を掲載しております。併せてご覧ください。

三木 隆弘
(株)NTTデータ四国 代表取締役社長
富山県出身。新潟の大学を卒業し、2000年、株式会社NTTデータに入社。金融分野の保険事業領域に配属される。課長代理、課長を経て、2015年に第一金融事業本部・保険ITビジネス事業部の部長に就任。以降、同事業部で事業推進部長、統括部長を歴任。2022年6月、グループ会社である株式会社NTTデータ四国の代表取締役社長に就任。
※2025年6月4日時点の情報です。

D氏
(株)NTTデータ四国
香川県出身。大学から四国外に出て、東京のITベンチャーからキャリアをスタート。30歳の頃、NTTデータグループの一員であるNTTデータシステム技術(現NTTデータ フィナンシャルテクノロジー)に転職。いつかは香川で暮らしたいという気持ちはあるものの、キャリアの選択肢がなかなか見出すことができなかったが、子どもを授かったことを機に、地元へのUターンを本格的に考えるようになる。同グループ会社からの転職という形でNTTデータ四国に入社。現在は主に公共分野の業務を担当。

S氏
(株)NTTデータ四国
親が転勤族で、青森や名古屋など様々な地域で子ども時代を過ごす。中学校から大学までは札幌。2018年、東京のITコンサルティング企業に就職。仕事とプライベート共に充実した期間を過ごすが、このままでいいのか?という疑問をもち地方への移住を検討し始める。瀬戸内を旅行する中で高松港から見た空と海の景色に惹かれ、四国への移住を決断。転職活動をスタートさせ、NTTデータ四国に入社する。現在は主に金融分野の業務を担当。

佐々木 一弥
(株)リージェント 代表取締役社長
香川県さぬき市出身。大学卒業後、2007年に株式会社リクルートに入社。求人広告の企画営業職として、香川・愛媛にて、四国に根差した企業の採用活動の支援を中心に、新拠点や新サービスの立ち上げも経験。2010年に販促リサーチを行うベンチャー企業の創業メンバーとして参画。創業の苦労と挫折を経験。2012年、株式会社リージェントの創業メンバーとして入社。2019年より代表取締役社長に就任。子どもと焚き火をするのが至福の時間とのこと。

松本 俊介
(株)リージェント チーフコンサルタント
香川県高松市出身。大学卒業後、住宅メーカーへ入社。その後、株式会社リクルートへ転職し、ブライダル領域にて結婚式場の集客最大化に向けた提案営業に従事。鳥取県・島根県のエリアリーダーとしてマーケット拡大に向け戦略を設計推進。2017年にUターンし、自身の経験から「暮らしたいところで思い切り働く」という想いに共感し株式会社リージェントへ入社。現在は娘2人、息子1人の三児のパパ。オフも子どもたちと遊ぶのが一番という子煩悩な面も。