「チャレンジ」の先にあるキャリア
- 吉津
- はじめに、松尾様のこれまでのご経歴についてお聞かせいただけますでしょうか。
- 松尾
- 大阪府出身で、大学院を修了してからはずっと関東に住んでいました。大学・大学院は工学部で、モノづくりに携わりたいという思いから、卒業後は三井東圧化学株式会社(現:三井化学株式会社)に入社しました。入社後は研究所に配属され、新製品の開発などに携わりました。
- 吉津
- 研究開発を希望してご入社されたのですか。
- 松尾
- 私はモノづくりに直接関わりたかったので、当時は工場勤務を希望していたのが本音でした。ただ、研究開発を通じてさまざまな部署と協働できましたので、特にこだわりはありませんでした。その後、環境に配慮したプラスチック製品の開発に成功し、その製品のマーケティングを担う部署へ異動しました。当時、環境分野で先進的だったヨーロッパを開拓するため、ドイツやオランダ、北欧などへ長期出張し、多くのお客さまを訪問してプレゼンテーションも行いました。まだインターネットも普及していない時代で、会社名鑑で調べてはFAXや電話でアプローチする日々でした。英語が拙かったこともあり非常に苦労しましたが、当時の自分にできることは全てやりきったと思っています。
- 吉津
- ご苦労も多かったのですね。その後はいかがですか。
- 松尾
- 研究開発に戻り、ソーラーパネルに使われる封止剤の開発に取り組みました。ソーラーパネルは30年以上にわたって使用されるため、耐久性の高い製品が求められていました。当時はEVAという樹脂を使った製品が主流でしたが、より良いものを作ろうと会社からの命を受け、開発をスタートしました。社内での注目度は高くありませんでしたが、製品課題を乗り越え、お客さまに採用いただくことができました。そして、「開発の次は営業をやってほしい」という流れで、2013年からは営業部長としてのキャリアを歩むことになりました。
- 吉津
- 研究開発から営業へという流れだったのですね。
- 松尾
- 私が営業部長に就任した際は、海外製品の影響もあり事業としては厳しい状況でした。そこから新製品の投入などで事業を立て直し、4年で軌道に乗せることができました。その後は、新事業開発や開発研究センター長などのマネジメントを担ってきました。振り返ると、目の前のことに真摯に取り組み、「チャレンジ」を続けてきたからこそ、さまざまなキャリアを経験できたのだと思います。

4つの事業を通じて、身近な生活を支えるモノづくり
- 德永
- 御社の事業についてお聞かせいただけますでしょうか。
- 松尾
- 当社は1957年に東邦セロファン株式会社という社名でスタートしました。その後、時代の変化に合わせて事業転換を行い、現在に至ります。現在は食品包装用フィルム、電子材料・医療用の機能性フィルム、ロースハムやソーセージの製造時に用いられるチューブ状の成形紙、フィルムの固着を防ぐ微細なアクリル粒子などを製造しています。
- 德永
- 各事業の特徴を教えてください。
- 松尾
- 現在の事業は、OPPフィルム、コートフィルム、ケーシング、PMMAビーズの4事業で構成されています。OPPフィルム事業とコートフィルム事業は、親会社であるアールエム東セロ株式会社のグループ事業として展開しており、当社はその中で重要な生産拠点と位置付けられています。
OPPフィルム事業では、主に冷凍食品のパッケージなど、防湿性・耐水性に優れた食品の包装用フィルムを製造しています。また、コートフィルム事業では、フィルムにコート剤を塗布することで機能性を持たせ、食品などに用いられるバリアコート包装用フィルムや、電子材料関連から医療用まで幅広い用途で活用される離型コートフィルムなどを製造しています。
ケーシング事業では、紙を主原料としたチューブ状の成形紙を製造しています。水分や燻煙の透過性が高いことから、ロースハムやソーセージ類の生産に用いられています。これは、当社で展開している事業の中で、最も歴史の長い事業です。
そして、PMMAビーズ事業では、フィルム同士の固着を防ぐアンチブロッキング剤や、塗料の艶消し剤などに使用される微細なアクリル粒子を製造しています。ケーシング事業とPMMAビーズ事業は、当社の独自事業として今後成長させていきたいと考えています。 - 德永
- 2024年に親会社の変更がありましたが、どのような影響がありましたか。
- 松尾
- 当社は三井化学系列の会社でしたが、2024年にレンゴーグループの一員となりました。もともと親会社であった三井化学東セロ株式会社の包装事業と、レンゴーグループ傘下のサン・トックス株式会社が経営統合したことで、新設されたアールエム東セロ株式会社の子会社となったのです。かつては国内トップを競っていた企業同士が、今ではお互いの技術やノウハウを共有し、各事業でのシナジーが生まれつつあります。
- 德永
- 今後はどのような方針で事業を進めていくお考えですか。
- 松尾
- OPPフィルム事業やコートフィルム事業は親会社の受託生産となるため、売上拡大よりも安定供給やコスト削減などに重点的に取り組んでいます。当社独自のコストダウン策を検討し、親会社が開発を進めている新製品をいち早く取り込めるよう連携を深める動きを進めています。また、独自事業であるケーシング事業やPMMAビーズ事業は、徐々に事業を拡大させていきたいと考えています。これら2つの独自事業は、当社の祖業であるセロファン製造やコートフィルム事業で培った技術を横展開したものです。これからもお客さまの課題や要望に対応する形で製品をブラッシュアップしていきたいですね。

「ワークライフバランス」と「チャレンジ」の両立
- 德永
- 中途採用において、どのような方を求めていますか。
- 松尾
- まずは、明るく元気のある方を求めています。当社はチームで仕事をする風土がありますので、明るく元気であることはチームワークを図る上で重要な要素だと考えています。加えて、私は「チャレンジ」という言葉を大切にしており、チャレンジを恐れない方を仲間としてお迎えしたいと思います。
- 德永
- 「チャレンジ」という言葉を大切にされているのは、どのような背景があるのですか。
- 松尾
- 私のキャリアもチャレンジの連続でした。冒頭の話にもありましたが、私自身、研究開発、マーケティング、営業、マネジメントと、幅広い経験をさせていただきました。キャリアではさまざまな困難がありますが、「困難は自分が乗り越えられる範囲でしかやって来ない」と思っています。過去を振り返ると、「失敗した」と感じたのは、困難から逃げようとしたり、ごまかそうとしたりした時でした。困難に対して、真摯に準備して取り組めば、ほとんどは乗り越えられると思います。困難に立ち向かう時は「不安」な気持ちが強いでしょう。私自身もそうでした。ただ、困難に立ち向かうことで得られる経験や成長はとても大きいと思いますので、私はチャレンジしたこと自体を褒め合えるような組織をつくっていきたいと考えています。
- 吉津
- 採用にあたり、御社で取り組まれていることはありますか。
- 松尾
- 働き方改革を全社で進めてきました。残業時間の削減にも取り組み、今では月10時間程度まで抑えることができています。また、年間休日は122日、有給休暇の消化率も90%となっており、ワークライフバランスの取れた働き方ができる環境になってきたと思います。
- 吉津
- 実際にご入社された方の声はいかがですか。
- 松尾
- 中途入社された方々にお聞きすると、残業の少なさや働き方の面で満足いただいている場合が多いです。社風としても「アットホーム」と言われることが多いのですが、それはチームワークを重視しているからだと思います。チームで仕事をする協力体制が整っていますので、有給休暇の取得も助け合いながらきっちりと取得いただいています。あとは、本社・工場が徳島のみですので、転勤がないというのも安心材料になっているようです。
- 吉津
- 中途採用の方に期待したいことは何でしょうか。
- 松尾
- 今後ご入社される方に期待したいのは、「巻き込み力」です。ただ人を巻き込むだけではなく、巻き込まれる側がいかに気持ちよく力を発揮できるかが大切です。巻き込み力が高い方は、「この人のためなら、頑張ってみよう」「困難な課題だが、もうひと踏ん張りしよう」と、周囲の人たちを前向きに引っ張っていけるのが特徴です。
こうした巻き込み力を発揮していくためには、スキルだけではなく周囲からの信頼も必要となりますので、口だけではなく現場で汗をかきながら、自らが率先して取り組めるかが重要です。当社が今後も事業を展開していくためにはさまざまな課題を解決していく必要があります。こうした課題に一緒に取り組みながら、周囲を巻き込み、会社組織を牽引する方に仲間になっていただきたいと考えています。

四国ならではの働く価値
- 德永
- 徳島に来られて1年が過ぎましたが、生活面はいかがですか。
- 松尾
- 短い期間ではありますが、徳島は本当に良いところだと実感しています。自然豊かな環境で、快適な生活を送れています。何よりも食べ物がおいしく、会社のメンバーや守衛さんから「今朝畑で採れたので、よかったら食べてください」とお裾分けをいただくこともあるのですが、徳島のレンコンや鳴門金時などは本当においしいですね。また、人々も親しみやすく親切な方が多いという印象です。以前は関東で勤務していましたが、それとはまた異なる温かみを感じています。
- 德永
- 徳島での一番の思い出は何ですか。
- 松尾
- やはり、徳島といえば阿波おどりですね。当社は企業連の「トーセロ連」で参加しているのですが、本当に素晴らしい経験でした。昨年初めて阿波おどりに参加しましたが、桟敷で踊る経験は、「今まで生きてきてよかった」と素直に思えるほど感動的なものでした。
- 德永
- 阿波おどりは練習も大変ですよね。
- 松尾
- おっしゃる通りで、本番に向けて3~4回練習しました。初めての経験で大変でしたが、社員や関係者のみなさんとも親交が深まり、とても良い機会になりました。「トーセロ連」は会社設立の時から続いており、企業連の中でも歴史が古く、規模も比較的大きい連です。仕事での交流はもちろんですが、阿波おどりを通じて親交を深めていけることも、徳島ならではの魅力だと感じています。
- 吉津
- 特にUIターンされた方にとっては、良い機会になりますね。
- 松尾
- そうだと思います。阿波おどりはもちろんですが、今後は徳島に貢献できることを増やしていきたいと考えています。四国トーセロという会社は、地元・徳島で65年余り事業を続けてきていますが、最終製品を作っていないこともあり、会社の知名度はそれほど高くありません。企業としての知名度向上という点では、まだ努力の余地があると考えています。
当社グループにおいては、地域のサッカークラブのスポンサーになる企業や、地域内でテレビCMを放送している企業もあります。当社も、徳島の皆さまに「四国トーセロ」という企業をより深く認知していただき、地域にとって必要不可欠な存在となることを目指していますので、今後も地域貢献活動を積極的に検討していきたいです。

当社が運営する転職支援サイト「リージョナルキャリア」にて、四国トーセロ(株)代表取締役社長 松尾充記氏の取材記事を掲載しております。併せてご覧ください。

松尾 充記
四国トーセロ(株) 代表取締役社長
大阪府出身。1988年、三井東圧化学株式会社(現:三井化学株式会社)に入社。三井化学東セロ株式会社(現:アールエム東セロ株式会社)にて、営業部長、新事業開発室長、開発研究センター長等を歴任。2024年、四国トーセロ株式会社の代表取締役社長に就任。

吉津 雅之
(株)リージェント 執行役員
広島県福山市出身。大学卒業後、株式会社リクルートに入社。住宅領域の広告事業に従事し、2013 年より営業グループマネジャーを歴任。2018年に8年半の単身赴任生活に区切りを付け、家族が暮らす四国へIターン転職を決意。株式会社リージェントでは、四国地域の活性化に向けて、マネジメント経験を活かした候補者・企業へのコンサルティングを行っている。

德永 文平
(株)リージェント コンサルタント
香川県高松市出身。大学卒業後、関西の大手鉄道会社に就職。経理部門に配属されたのちに、新規事業セクションに異動となり、自治体と連携したまちづくり事業や、スマート農業事業に従事。幅広い業務の中で、採用担当やチームメンバーの1on1面談を通じて「採用が組織を変えた瞬間」の面白さにはまっていく。「四国ならではの働く価値を創造する」というリージェントのメッセージに、自身も抱えていた悩みの答えを見出し、転職を決意。2024年、株式会社リージェントに入社。現在は自分と同じようにUIターンを検討している方の背中を押すべく、転職コンサルティングに従事している。