INTERVIEW2023.8.30

個人の幸せを起点とした、サステナブルな社会の実現。ー(株)グリーンエナジー&カンパニー・鈴江氏ー

INTERVIEW2023.8.30

個人の幸せを起点とした、サステナブルな社会の実現。ー(株)グリーンエナジー&カンパニー・鈴江氏ー

創業から7年で東証マザーズ市場(現:東証グロース市場)に上場した株式会社グリーンエナジー&カンパニー(旧社名:株式会社フィット)。サステナブルな社会の実現をテーマに、クリーンエネルギー事業やスマートホーム事業を展開し、日本の新しい「エネルギー供給」と「くらし」の仕組みづくりに挑戦しています。ただ単に住居や発電所を提供するのではなく、そこから生み出すエネルギーでゆとりある豊かな暮らしを実現し、かつ、社会貢献もできるという、これからの新しいライフスタイルを定着させることを目指しています。そんな株式会社グリーンエナジー&カンパニーの代表取締役社長 鈴江氏に、思い描くビジョンや想い、そして、四国・徳島ならではの「働く」価値について伺いました。

※株式会社フィットは、2024年5月より株式会社グリーンエナジー&カンパニーに社名変更しました。

個人参加型、持続可能エネルギー社会の実現。


吉津
本日はよろしくお願いいたします。御社のビジョンで「個人参加型、持続可能エネルギー社会の実現」を掲げていますが、個人参加型という面が特徴的だと感じています。個人にフォーカスしているのはなぜでしょうか?
鈴江
当社の祖業は住まい・暮らしの領域からスタートし、現在は再生可能エネルギーやスマートホームなどの事業を展開しています。もともと、日本は将来に不安を抱えている人が多く、そうした状況を少しでも変えたいと思っていました。また、住まい・不動産・投資という観点で、個人の暮らしにもっと役立つ事業ができないかとずっと考えてきました。
吉津
住まい・不動産という観点では、私も前職にて不動産領域の広告を長年担当していました。鈴江さんは住まい・不動産領域の将来性をどのように捉えていましたか?
鈴江
私が起業したのは30代の頃でしたが、このまま目先の事業だけだと厳しくなると感じていました。2008年をピークに日本の人口は減少に転じており、住まい・不動産は人口や世帯数に大きく左右されます。世帯数も2015年をピークに減少に転じています。住宅はあり余っているのに、住宅を建て続けていくことに、当時の私はエネルギッシュに頑張っていけるイメージを持てませんでした。
吉津
そうした葛藤を持ちながら、どのように現在の事業・ビジョンに至ったのでしょうか?
鈴江
世界中を旅しながら、何か事業のヒントがないかを探っていました。そして、2011年のドイツ視察が運命を変えました。当時、住まいを視察していたのですが、とても元気で活性化しているフライブルク・ヴォーバン地区を見つけました。その活性化の原動力が再生可能エネルギーだったのです。このスキームを日本に持ち帰り、展開できないかと考えていました。
吉津
まさしくタイムマシーン経営ですね。
鈴江
そうですね。住宅のシェアを獲得していけばもちろん成長もできますが、新しい住宅も必要以上にはいらない、と思っていました。そうした中で、私は0→1で新しい価値を生み出していくことに、やりがいや価値を感じるタイプだったので、この視察での気づきは衝撃でした。
吉津
フライブルクの町が元気で活性化しているのは、何がポイントだったのですか?
鈴江
お金が地域に循環しているところです。太陽光発電所は電気を生み出す、つまり、お金を生み出しているということになります。その太陽光発電所へ個人が投資すれば、お金が地域外に出ず、循環して自分たちの手元に還ってきます。例えば、エネルギーを使う時、コンセントにプラグを差し込みますよね。このコンセントを通じて、私たちは電力会社へお金を支払い、電力会社が燃料費などで地域外や海外へ支払いを行います。要するに、一方通行でほとんど地域には残らず、お金が地域に循環しづらいのです。
吉津
確かに地域の観点から考えると、お金の流れが一方通行になりやすいですね。
鈴江
「再生可能エネルギーを使った自家消費」と「電力会社から電力を買う」という選択肢ができれば、一方通行だけの流れはなくなり、個人に戻ってくる可能性が出てきます。そして、個人にリターンがあれば、個人がまた地域で消費ができます。要するに経済の流れが地域内で循環し始めます。そのため、私は県民全員で再生可能エネルギーに取り組んだほうが、地方経済を良くするためには有効だと考えています。
吉津
地方創生という観点でも面白い考えですね。この話は個人の方にも理解いただけるのでしょうか?
鈴江
個人の方にとっては、まずは目先のところが大事です。社会的な意義や価値は大事ですが、それよりも個人としてのメリットで判断してもらえたらと考えています。個人のメリットがあった上で、地方活性化などの社会的な価値を少しでも感じてもらえればと思っています。ただ、私たちは社会的使命を持ちながらこの事業に取り組んでおり、「サステナブルな社会の実現に、ここまで純粋にチャレンジしている会社はない」と言い切れるくらいの熱量で取り組んでいます。

2代目経営者と創業者。「負」の解消に向けて。


吉津
鈴江さんはグリーンエナジー&カンパニーを起業する前に、お父様の会社を継承されて、2代目経営者としての顔もありました。その後自分で起業しようと思ったのは、どのような想いからだったのでしょうか?
鈴江
事業承継については、あまり綺麗なこと言えないかもしれません。会社を引き継いだ時は事業や経営も大変な状況だったので、とにかく必死で会社を立て直しました。そして、事業が安定して、受け継いだものの良さを活かしながら、このまま続けていく選択肢もありました。ただ、起業家としてゼロから自分で事業を創ってみたいという冒険心が強かったかもしれません。2代目と創業者の両方やってみて、やはり性格的にも創業者のほうが性に合っていると思います。
吉津
会社を設立した際、どんな課題を解消しようとしていたのですか?
鈴江
当時は、家が持ちにくい・高すぎるということを課題と捉えていました。家はもっと買いやすくできるし、高くなくてもいい。そうした選択肢があるべきだという想いでした。ただ、根本のところは、住宅業界や建設業界は、なぜおかしなことやっているのだろう、という疑問から始まっており、まずは家を買いやすくすることからやってみようと考えました。
吉津
当時は通常の住宅に加えて、賃貸併用住宅などにも取り組んでいましたね。
鈴江
もう一つの観点として、住宅が「資産」になる方法を探していました。もちろんお金がすべてじゃないですが、人生を幸せにするためには、お金も絶対必要だと考えています。住宅を買って貧乏になっている人もおり、そんな状況を変えたい。そして、家が稼げる仕組みができないかってずっと考えていました。そうした中で、賃貸併用住宅や太陽光発電付きスマートハウスへと繋がりました。
吉津
住宅と資産という観点で、どんな課題意識をお持ちですか?
鈴江
日本では、住宅は一生に一回と言われることが多いですが、私は可能であればライフスタイルに合わせて住み替えていくほうが良いと思っています。子育てで手狭になり大きな家を建てる人が多いですが、実際には「こんな家にするんじゃなかった」という声が多いのです。また、地方は買ったときから資産価値が下がり続けることが多いトレンドであり、資産価値が下がり続ける家を何千万円もかけて買うことが本当にスマートな選択なのか疑問でした。
吉津
私は納得して買っていますが、家を買う前に聞きたかった言葉です(笑)。
鈴江
いくら言っても誰もこの話を聞かないので、今はあまり言っていません。理屈で伝えても、欲しいものは欲しいんです。私の妻だって「家欲しい!」って言っていましたから(笑)。それなら、できるだけ買いやすい「負」の少ない住宅を買いましょう、というメッセージに変えました。そして、今は「家はランニングコスト込みで買う」時代だと考えています。
吉津
「負」の少ない住宅と資産価値はどのような繋がりでしょうか?
鈴江
例えば、家が2,000万円だったとして、35年間で500万円くらいの光熱費がかかります。この光熱費が仮に0円になれば、不動産の値下がりがあったとしても、光熱費分がプラスになれば少しは豊かになるじゃないですか。そして、電気自動車(EV)が普及してくれば、光熱費に加えて移動費(車の電気代)までゼロになるかもしれません。そうすれば、地方に住んでいても豊かな暮らしができると思っています。

再生可能エネルギーの将来性


吉津
太陽光発電などのクリーンエネルギー事業について、今後の将来性はいかがでしょうか?これまで再生可能エネルギーを牽引してきたFIT制度(固定価格買取制度)が変更となり、市場としては厳しいのではという声もあると思います。
鈴江
確かにFIT制度が変更となりましたが、FIT制度の目的は補助制度です。FIT制度が変更になったからといって、再生可能エネルギー辞めますってなったら、当初の目的は達成できませんよね。ヨーロッパも同じですが、これからが本番であり、自家消費のマーケットが始まります。
吉津
FIT制度は始まったときは投資として再生可能エネルギーに取り組むことも多かったですが、今後は自家消費マーケットが始まるということですね。


鈴江
FIT制度が始まった2012年の太陽光発電設備の一般的な単価からすると、現在は設備投資のコストは1/3程度に下がっています。また、自分で電気を作って自分で使う「自家消費」が、1番メリットがあります。現在の電気料金単価の1/3~1/4程度の単価で利用できるので、コスト優位性が高いのです。
吉津
国のカーボンニュートラルの取り組みや、世界的なSDGsの流れなどもあり、再生可能エネルギーに対しての追い風もあると思いますが、いかがでしょうか?
鈴江
実際に今では日本を代表するような大企業からも、私たちの発電所を求めてお問い合わせを頂いております。もちろん「自家消費」用途なのですが、課題は供給が追い付いていないことです。つまり、太陽光発電に適した平坦地がないのです。風力やバイオマスは取り組みに時間がかかるので、太陽光発電ができる平坦地が日本でどこに残っているかというと「地方」なのです。
吉津
地方だと耕作放棄地などの農地に成長の白地がありそうですね。ただ、規制もあり、ハードルも高いと思いますがいかがでしょうか?
鈴江
私たちも力を入れて取り組んでいますが、あまり進んでいないのも事実です。ただ、少しずつでも進めていければ、まだまだ増やしていけると思っています。また、農地付きの発電所がうまくいけば、地方にとっても大きなチャンスになると考えています。食物を作りながら、エネルギーを供給して、雇用も創出する。そうした思想を基に、現在農業分野にもチャレンジしており、湿度で野菜を育てるという新しい概念に基づく農業技術に当社のエネルギー自給システムを組み合わせたコンテナ開発もしています。
こうしたスキームを活用できれば、3Kではない農業になる可能性もあると考えています。エネルギーと農業が繋がり、地方で雇用を生み出しながら街づくりができる。そんな世界観を私たちなら実現できるんじゃないかと思っています。
吉津
農業も本当に大変な仕事ですが、コンテナで生育できるようになっていけば多くの方がチャレンジできる仕事に変わっていく可能性がありますね。
鈴江
エネルギーと住まいと食を組み合わせた街づくりができれば、地方創生の先駆け的な事例になります。それを四国・徳島で実現できれば、人口減少や遊休地の拡大などの様々な課題を抱える地方に水平展開していけます。エネルギーも住まいも食も、人が生きていく上で欠かせないものだからこそ、自分たちの手で取り組むことができる、そんなサステナブルな社会を実現したいと思います。

成長とチャレンジの両輪を支える組織の成長。


吉津
組織面の話になりますが、離職率も高かった時期もあったとお聞きしています。現在の御社の組織体制や社風はいかがですか?
鈴江
正直に言うと、上場前後のタイミングでは離職率も高く、ハードな環境だったと思います。組織体制はありましたが、実際は鍋蓋式の組織であり、社長の私がメンバーレベルまで直接マネジメントしているような状況でした。社長から直接指示されて、居心地の悪かった社員も多かったと思います。ただ、現在は組織を牽引する責任者も育ってきており、私も役員陣に現場を任せており、経営者にしかできない仕事に集中しています。また、私自身がマネジメント手法を変えて、良かったと思っています。時間はかかりましたが、組織として責任と役割を渡したからこそ、みんなが想いをもって成長してくれたと思っています。
吉津
私も事業部の執行役員の方とお話させていただきましたが、効率化・IT化が進んでいるだけでなく、チャレンジする仕組みを持っていることに驚きました。
鈴江
例えば、施工管理職は現場のみというイメージもありますが、社内プロジェクトにも参画できるように業務時間の一部をプロジェクトに使えるようにしています。チャレンジしてほしいといっても、時間がなかったら取り組めないので、業務時間に含めています。私は「ちょうどええベンチャー」という表現をするのですが、当社は上場企業としても組織体制や人事制度などを整備してきました。
ただ、安定感を求めている人ではなく、チャレンジしようとしている人と一緒に働きたいと思っています。もちろん、チャレンジする上で、ある程度の安定や待遇は必要だと思っています。「個人参加型、持続可能エネルギー社会の実現」を本気で目指しているので、この想いに共感していただける人と一緒にチャレンジしたいと考えています。

四国ならではの「働く」価値とは


吉津
当社は、四国ならではの「働く」価値を創造する、というミッションのもとに活動しているのですが、四国・徳島ならではの観点での想いはありますでしょうか?
鈴江
私は四国・徳島の好きなところと嫌いなところ、両方あります。生まれてきた四国・徳島だからこそ、四国を代表する企業にしていきたいです。私の人生ロマンビジョンにも書いていますが、四国・徳島発祥の日本を代表する再生可能エネルギーの企業になりたいと考えています。
吉津
そういう面では、徳島発祥への想いは強いのですね。
鈴江
そうですね。四国・徳島発祥ということは揺るぎませんし、私も本店を徳島から変えるつもりはありません。もちろん東京に移したほうが良いという意見もありますが、できるだけ徳島という根っこは残したいと思っています。
吉津
御社は東京本社と徳島本店の体制となっていますが、働き方という点ではいかがですか?
鈴江
私は全国何か所に住まいやオフィスがあって、好きな時にそこで働けるっていうことを目指しています。当社の役員や社員にも、そうした働き方が当たり前にできる働き方を目指してほしいとメッセージしています。なぜならば、そうした働き方のほうが、絶対にクリエイティブになるからです。
吉津
都市から地方へUIターンすると刺激がなくなるという話も聞きますが、定期的に都市へ行き、最新情報に触れる機会は本当に大事ですね。もちろん家族の事情などもあり出張のような形になるかもしれませんが、うまく融合した働き方ができるといいですね。
鈴江
本当にそうだと思います。地方の悪いところは、新しい情報をインプットしないことや、勉強をしないことです。私はこれだけは絶対にダメだと思っていて、地方の嫌いなところでもあります。もちろん全員がそうではないですが、近くにそうした環境がないので自分の意志で動けるかが大事です。
一方で、地方の良いところは、「ゆとり」です。都会でインプットしてきたものを、地方でアウトプットする。感覚的になってしまいますが、都会で情報収集しても落ち着いて考えられないんです。ただ、徳島に戻ってきて、自然を眺めながら考えていると、いろいろと整理されていく感じがあります。やはり、人間があのコンクリートの中にいたら、大事なことを忘れてしまうというか、自然の中で考えることでインスピレーションがあったりすると実感しています。
吉津
確かに都会と地方の両方のメリットを享受できると、働くことがさらに面白くなっていきそうですね。本日は貴重なお話ありがとうございました。鈴江さんが個人にフォーカスされている背景や、事業と地方創生の結びつきなど、大変理解が深まりました。本当にありがとうございました。

鈴江 崇文

(株)グリーンエナジー&カンパニー 代表取締役社長

徳島県徳島市生まれ。大手ハウスメーカー、住宅フランチャイズ会社を経て、家業のゼネコンの経営に参画。その後、2009年に徳島市にて株式会社フィット(現:株式会社グリーンエナジー&カンパニー)を設立、創業7年で東証マザーズ上場(現:東証グロース市場)を果たす。巨大資本が担う日本のエネルギー供給を一人一人の手に取り戻したいという思いで「個人参加型、持続可能エネルギー社会の実現」をビジョンに、全国にクリーンエネルギー発電所、スマートホーム等を開発。事業を通じて、お金の心配がない新しいライフスタイルづくりに挑戦している。

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