INTERVIEW2024.4.17

ありのままに人生を楽しみ、幸せになる道がある。ー(株)五星・今中雅樹氏ー

INTERVIEW2024.4.17

ありのままに人生を楽しみ、幸せになる道がある。ー(株)五星・今中雅樹氏ー

総合建設コンサルタントとして、地場で60年の歴史を積み重ねてきた(株)五星。地元・香川における信頼の厚さは圧倒的であり、他地域展開にも力を入れています。「当社を支えているのは、真っ当で真面目で、お客様や地域住民の幸せを真剣に見据える従業員たちの存在だ。」そう断言するのが、代表取締役社長の今中雅樹氏です。五星に脈々と流れるDNAを大切にしながら、着実な歩みを続ける今中氏とともに、四国ならではの働く価値について考えてみました。

従業員の可能性を開花させたい


四ノ宮
今中社長は関西出身とお聞きしていますが、香川に本社のある五星になぜ入社することになったのですか?
今中
前職は大阪で建設コンサルタントの仕事に就いていました。ところがその会社が倒産してしまいまして。身の振り方を考えていた時に、創業者の息子である浅野雄嗣さん、今の五星で相談役を務めてもらっていますが、その方から「今中さん、どうするんだ?」と声をかけられたのです。1990年頃のことです。
当時、五星にはまだ関西支社がなく、メンバーが揃うようだったら大阪に事務所を出したい、と模索していました。そんな折だったから私を目に留めてくれたのでしょう。もちろん私にも異論はありません。喜んでお誘いを受けました。五星に入社し1年ほどは香川で過ごしましたが、関西支社ができるとともに大阪に戻り、そのままほとんど関西で暮らしました。
四ノ宮
どのような経緯で社長に就任することになったのですか?
今中
大阪では支社長まで務めさせてもらい、このままサラリーマン人生のゴールを迎えるのだろう、と思っていたんです。それが当時の社長、今の会長から「取締役に入ってくれ」と打診を受けまして。もちろん寝耳に水です。しかし、長く関西を任せてもらったのですから信頼に応えなければなければと、経営陣の末席に加わらせてもらいました。
それから2年で代表取締役専務を務めることに。さらに2年後、現職に就任しました。会長は年齢的にも代替わりを急ぎたい、という思いがあったのでしょう。私も専務に就任した頃には腹をくくっていました。任される以上、職責を果たさなければなりません。この会社をいい形で後継に引き継ぐためにがんばろう、と考えていました。


加地
社長になって、どのような感慨を持たれましたか。
今中
改めて感じたのは「五星は本当に真面目な会社だ」ということです。お金の流れなども実に真っ当で帳簿通り。経費の使い込み…という疑念などかけらも湧きません。当たり前といえば当たり前の話なのですが、「会社の金は公金である」という姿勢が徹底しているのです。
融資してもらっている銀行に毎年、決算報告に行くのですが、いつも「五星の決算書は金ピカですね」と誉めてくれます。このパブリックな意識は創業者始め、歴代の経営者が築いてきた五星の伝統。崩してはいけないと肝に銘じています。
また、経営者になった当初は会長に「こういう場合はどうしましょう?」と質問していました。しかし、会長が細かく指示することは一度もなかったです。「君の好きなようにやりなさい」と。会長から見ると私に至らない点は多々あったでしょう。しかしそれを言ってしまうと私を萎縮させる。だから、自由にさせてくれているのだと思います。一度任せたら徹底的に信頼する。これも五星の長所の一つです。
加地
社長として、これをやってみたい、というような思いはありますか?
今中
お客様である自治体の方々も、その先にいる地域住民の人々も、あるいは取引先など関係者も、五星と関わった人々は全て幸せになってほしい、ということですね。これは私のオリジナルではなく、創業者から連綿と続く五星のDNAのようなもの。ですから、私の中に根付いているのです。
社長となってからは、特に従業員に対し、こう感じることが多くなりました。若く才能に溢れた従業員の可能性をしっかり開花させてあげたい。当社の従業員は本当に真面目です。勉強も熱心だし、責任感を持って課題に取り組んでくれる。五星はここで働くみんなの努力に支えられているのです。
私としては従業員の成長につながるチャンスを与えていかなければなりません。私もいずれは、この会社を後継に委ねる時が来ます。その時、後継者が自信を持って経営を担えるように成長を支える。それが社長としての私の役割と考えています。
社長となってからは、やはり現場でお客様と会う回数が減りました。関西支社長の時は毎日のようにお客様の顔を見に行っていたのに。その点を寂しくは感じますが、一方で従業員の成長を見守るという喜びが増えました。今までこういう案件は一人で任せられなかったのに、いつの間にか一人でこなせるようになった…そんな場面に出会うと感慨深いものがあります。
しかし、当の本人が成長を実感できていないことも結構あるんです。その点はもったいないと思います。私などから見ると大きく成長しているのに。そのことを肌で感じてほしいので、従業員が上司と定期的に行う1on1ミーティングの席では「従業員の成長した点を詳細に伝えるように」と各現場の上長に伝えています。
加地
「五星」の社名・社章の説明として「五星(水星・金星・火星・木星・土星)が太陽のもとに集うように、みんなで肩を組み力を合わせ、幸せをつかもう」という内容が五星のホームページに掲載されていますが、それを社長自ら実践されているのですね。


今中
先日、20歳になる若手の祝う会を開催したんです。まあ、会社で行う、ちょっとした成人式みたいなものです。15分程度でしたが、それぞれのビジョンを聞いたり、何か困っていることはないかと尋ねたり。従業員達の意見を聞いていると、キャリアは浅いですが、「自分たちでこの会社を作り上げていくんだ」という意志の強さを感じました。頼もしいですね。
当社が創業100年を迎える頃には、そんな若手の中から経営者が出ているでしょう。当社の若手たちであれば、立派に五星を100年企業に育ててくれるのではないかと思います。
私だって創業家とは何の関係もないのに経営の舵取りを預かることになりました。こういう形で継承しているのが五星には合っています。だから、今の若手たちから経営者が出ても全くおかしくないんです。そのためにも、しっかり育てなければならない、と感じます。

社内の取り組みの大半は、従業員のアイデア


四ノ宮
五星は総合建設コンサルタントとして、地元の香川で高いシェアをお持ちです。事業領域も幅広く、建設コンサル、補償コンサル、地質調査・測量などに加え、独自開発したシステムによる地理空間情報に関するコンサルティングもやっておられます。それだけでも多彩なのに、それ以外の取り組みも積極的にやっておられるようですね。
今中
そうですね。人の行動の軸になる「志」を基点にコミュニケーションを深めることで、より良い人間関係を築こうという「みらい創り」プロジェクトでは、従業員主体で未来について考えてもらいました。その意見をビジョンブックとして集約させ、未来に向けて自分自身がどうあるべきかを考える材料にしてもらっています。
また、日々の従業員のちょっとした言動に対する感謝を見える化しようと、サンクスカードというコミュニケーションツールも導入しました。今ではすっかり定着し、毎月100枚以上の「サンクス!」が飛び交っています。
四ノ宮
時短への取り組みということで、複数の業務を全体最適の視点で管理するCCPMも導入されていますね。
今中
残業・長時間労働の削減は社会的な課題ですから。ただ、仕組みに現場の動きを機械的に合わせようとしても、うまくいきません。現場の実態を考慮しつつ、手戻りや納期遅れなどのリスクをチームで減らしていこうと活動しています。CCPMに関してはお客様に請われてコンサルとして提供もしているのですが、積極的に売ろうという意志はありません。あくまで当社の時短のためにやっていることで、それがお客様の何らかの参考になれば…ということです。
加地
地域住民が主体となって行っているまちづくりのための委員会・ワークショップにも、ファシリテータなどとして出席されている、とお聞きしています。
今中
地域住民とか、自治体の方々が入ったワークショップに参加して、資料作りや議事録整理などのお手伝いをしています。こうした地域住民の要望と自治体を接続する活動は、自治体にとってありがたいものなんです。自治体の予算に限りがある中、優先順位をつけてインフラ整備を進めるには住民の声を聞くのが一番ですから。
四ノ宮
こういう取り組みやプロジェクトは社長が発案するのですか?


今中
私が細かい指示を出すことはほとんどありません。大半は現場の従業員の発案によるものです。私が言うのは、例えば品質を◯%上げるのに対策を考えてくれとか、大まかな方向性だけです。その方向性を従業員が各論に落とし込み、プロジェクトとしてスタートする、というケースはあります。発案も動かすのも、ほとんど従業員が主体です。
当社の従業員はみんな真面目で賢いから。私などが細かく言わなくても、自律的に動いていけるんです。
加地
従業員の力を信じ、育てようとされておられるのですね。
今中
地域によっては大手のコンサルとJV(共同企業体)を組んで業務を進めることもあります。それでJV先に気に入られて「ウチに出向させてくれたら、国家資格を取るまで教育するよ」と言ってくれる場合もあります。そんな時は、本人が希望するのであればお膳立てしてあげるようにしています。全国展開している大手となると、当社では経験できない規模の仕事に携わるチャンスが出てきますから。国内だけでなく海外のプロジェクトにも参加できるかもしれません。
出向させると、そのまま戻って来ない可能性もあります。でも、従業員当人が幸せなら、その選択も致し方ないと思います。チャレンジしたい気持ちがあるなら応援したいですね。もちろん、せっかく縁あって五星を選んでくれたのだから、まずは自社で育てるのが大前提ではありますが。
四ノ宮
五星と関わった人々は幸せになってほしいというのは、従業員に対しても共通しているのですね。
今中
それが五星のDNAですから。このスタンスは伝承していきたいと思います。

恵まれた環境の中で、幸せが追求できる


加地
私たちは「四国ならではの働く価値」を多くの人に知ってもらうことで、四国へのUIターンを志向するきっかけにしてもらいたいと思っています。今中社長は四国で働くことについて、どのようにお考えですか?
今中
まず思うのは、香川はいろんな意味で恵まれているということです。
例えば公園。どの町にもたいてい運動できる公園があって、誰でも自由に汗がかける。大阪にも運動公園はありますが、使用希望者が多くて抽選で外れることもある。でも香川ではそんな心配もない。大人でも小さな子どもでも、公園で自由に遊べる。こういう環境は地元で暮らす人には当たり前かもしれないけど、大都市圏ではなかなか望めません。
通勤がノンストレスなのもいいですね。大阪で仕事して満員電車に乗って帰ったら、家に着くまでにかなり体力を消耗します。しかし香川ではそんなことがない。自転車通勤や自動車通勤もできる。公共交通機関の混み具合も大都市圏と比べると雲泥の差です。


四ノ宮
そういった恵まれた環境の中で過ごしていると仕事にもいい影響があるかもしれませんね。
今中
全国展開する大手の建設コンサルを「最先端医療の揃った大規模病院」だとすると、五星のような会社は「町医者」的な存在ではないかと思います。町医者だからといって、クオリティが低いわけではない。地域社会には様々な課題があります。それらの課題に応えようと思うと、幅の広い知識・技術が必要になります。あらゆる悩みに一通り応えられるという幅の広さでは、むしろ「地域の町医者」の方が上手かもしれません。
地方にUIターンして自分のスキルやキャリアを活かせる仕事があるか…と不安に思う人もいるでしょう。五星には、その不安に何らかの形で応えるフィールドがあります。自信を持ってUIターンして地元貢献のため活躍してほしいですね。建設コンサルではありますが土木・建築の技術者でなくてもいい。電気でも機械でも、あるいは営業・事務でも、システムエンジニアでも、当社でなら活躍できますよ。
ありのままに楽しんで幸せを感じられる道が四国にはあります。そのために五星が利用できるなら、どんどん利用してほしいですね。
加地
人を大事に育てたい。その人が幸せになるのをしっかり応援していきたい。そう考える会社が四国にあることを誇らしく思います。今日はお忙しいところ、どうもありがとうございました。

今中 雅樹

(株)五星 代表取締役社長

1962年生まれ。大阪の建設コンサルタントの勤務を経て、五星に中途入社。1991年、五星の関西支社が立ち上がるとともに関西支社に配属となる。その後、30年近くを大阪で過ごし、関西支社長も務める。2016年、取締役就任とともに香川へ。2018年には代表取締役専務に就任。2020年より現職。

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