香川2026.9.9

香川から世界初を。技術開発トップと自動車業界出身エンジニアが語る「一気通貫開発」のダイナミズム。ー(株)タダノ・寺田氏、藤木氏ー

香川2026.9.9

香川から世界初を。技術開発トップと自動車業界出身エンジニアが語る「一気通貫開発」のダイナミズム。ー(株)タダノ・寺田氏、藤木氏ー

建設用クレーンや高所作業車をはじめとする「LE(Lifting Equipment:移動式作業機器)」分野で世界トップクラスのシェアを誇る株式会社タダノ。日本・北米市場で発売を開始した世界初のフル電動ラフテレーンクレーンをはじめ、大型モデルや他機種への電動化拡大、遠隔操作・自動化、安全機能の強化、データ活用やデジタルツインによる評価効率化など、同社は今、歴史的な技術変革期を迎えています。
このダイナミックな変革を牽引しているのが、技術開発部門を統括する技術開発本部長の寺田氏と、大手自動車メーカーからUターン転職し、車両開発ユニットで運転支援(ADAS)領域の開発を担う藤木氏です。
巨大な重機を安全かつ正確に動かす技術の奥深さ、自動車業界の知見がもたらす組織の化学反応、内燃機関から先進電子制御まで多角化するモノづくりの面白さについて、お二人にお話を伺いました。

少数精鋭だからこそ見える「ものづくりの全貌」。


溝渕
最初に、お二人のプロフィールをお聞かせください。
寺田
私は愛媛県出身で、大学で自動車部に所属するほど乗り物が好きでした。就職活動では自動車業界も考えたのですが、自動車は非常に大人数の組織で分業して開発するため、限られた領域しか把握できなくなってしまうのではないか、という懸念がありました。一方、建設機械は比較的少人数で開発を行うため、製品全体を見渡しながら仕事ができる点に惹かれました。そうした想いもあり、複数のメーカーを見学した中で最も面白そうだと感じたタダノへの入社を決めました。
入社後はラフテレーンクレーンやトラッククレーンの製品開発からスタートし、車両開発や新動力システムの先行開発を担当してきました。現在は技術開発本部全体を統括し、5年、10年先を見据えた技術をいかに製品へ落とし込んでいくかを指揮しています。


溝渕
30年にわたる技術開発の歴史を、最前線で創り出してこられたのですね。
寺田
30年前は紙と電卓を使って設計していましたが(笑)、そこから3D CADなどのデジタル設計へと大きなシフトを経験してきました。
自動車は基本4輪ですが、クレーン車両は4輪から8輪、16輪まで多岐にわたり、時速10kmの作業車両から時速80km以上で公道を走るオールテレーンクレーンまでさまざまです。モデルチェンジで突然4輪から8輪へ変貌を遂げるような、まるで「突然変異」のようなダイナミックな開発にも携わってきました。
溝渕
藤木さんはどのような経緯でタダノに転職をされたのですか。
藤木
私は香川県出身で、大学院ではロボット工学(災害探査用不整地歩行ロボット)を専攻し、自動車メーカーに入社しました。研究所や開発部門に所属し、音・振動制御や自動運転の経路生成プログラム開発などの先行研究から、HEV・EVの回生協調ブレーキ、横滑り防止装置の量産立ち上げ・評価、サプライヤー調整まで幅広く携わっていました。
転職を思い立った理由としては、一つは両親の将来を考えて、いずれは夫婦の地元である香川へ戻りたいという想いがあったこと。もう一つは、前職で先行研究から量産立ち上げ、不具合対応までを一通り経験できて「やり切った」という達成感があったことです。新しいことにチャレンジをしたいという想いもあり、タダノであれば、香川にUターンをしても今までの経験が活かせると考えました。
現在は新動力システム開発部 車両開発ユニットにて、クレーンの運転支援(ADAS)領域の開発を担当しています。

ゼロから「第一人者」になれるチャンスがある。


溝渕
藤木さんのような自動車メーカー出身の技術者が入社されたことで、どのような化学反応が起きていますか。
寺田
藤木さんが入社してくれたことで、内部からは見えていなかった安全面の課題や視点を次々と見つけて提示してくれるようになり助かっています。自動車業界の非常に厳しい法規対応や、信頼性を極限まで高める試験の考え方が持ち込まれたことで、私たちの試験手法や評価の仕方そのものが進化し始めています。外部からの新しい視点は、組織に本当に良い影響を与えてくれますね。
溝渕
藤木さんは、前職でのどのような経験が活かせていると感じていますか。
藤木
入社前は、研究所で取り組んでいた先行開発の知見が活かせるのではと想像していたのですが、実際に現場で一番役に立っているのは、「信頼性を担保するためにどこに気を配らなければならないか」という量産立ち上げの知見です。
あとは思考スタイルですね。新規性の高い機能を製品に組み込む際、「従来の知見が使える部分」と「全く知見がない部分」を切り分け、何に注意し、どのような設計と評価プロセスを踏むべきか、という思考スタイルはそのまま応用できています。
また、電子系や制御系を含めて担当したシステムのアーキテクチャに携わった経験も活かせていると感じています。
溝渕
安全性の追求についてはいかがでしょうか。
藤木
自動車だと安全機能がある程度標準化されていますが、建設機械ではまだそこまで普及が進んでいません。「どういった機能から導入が必要か」「どのぐらいの価格帯で受け入れられるのか」といった目標設定の段階から考える必要があります。自動車の場合はある程度確立された基準がありますが、建設機械ではその基準自体を自分たちで考える必要があるわけです。そこに、難しさと面白さがあると感じています。
溝渕
電動化やシステム構築という観点ではいかがでしょうか。


藤木
クレーンには油圧系のシステムがたくさん搭載されていますので、全てを電動化するのは難しいです。自動車と違い、車両側で認知や判断ができても、実際に動かすアクチュエーター側がそれに追いついていなければ意図通りに制御できません。クレーンの場合は、一部を見るのではなく、全体をマネジメントしながらシステムを繋いでいかなければならず、そこに自動車との違いがあると思います。
寺田
クレーンは建設現場で作業するだけでなく、数十トンという巨大な鉄の塊が公道を走行することになります。
電動クレーンの場合、モーター駆動による変速ショックのない滑らかな加速や、工事現場での静かで排ガスゼロの環境が得られる反面、バッテリーなどで重量は増加しがちです。そうした条件下で、公道を走るためには厳格な重量制限をクリアしなければなりません。
電動のメリット創出や安全面の強化を図りつつも、重量制約に合わせていかに構造を軽量化・最適化するか。この相反する要求を高次元でクリアする設計には非常に気を遣いますし、技術者としての腕の見せ所でもあります。
溝渕
タダノでの開発の面白さはどこにあると感じますか。
寺田
タダノで開発することの何よりの面白さは、「互いの顔が見える」ことですね。少人数チームだからこそ「どの部品を誰が設計したか」が分かりますし、レスポンスも早い。 自分が手掛けたシステムが形になれば、第一人者になれる面白さもあります。
藤木
私は、「自分がゼロから携わった機械が世に出て動いている」という実感を得られることが、タダノで開発することの一番の面白さだと思っています。自動車メーカーの場合、巨大な組織ゆえに一つの車種の開発に最初から最後まで関われることは稀で、途中で別の車種へ担当が変わることが大半です。タダノでは一気通貫で製品に関われるため、仕様策定から実機テスト、そして実際に世に出るところまで見届けられる。「自分がやった」と言える確かな手応えは、やりがいに直結します。

世界初の電動化と多角的変革。技術開発本部が挑む最先端テーマ。


溝渕
現在、技術開発本部として注力されているテーマを教えてください。
寺田
非常に幅広い領域に挑んでいます。大きく分けると、クレーンの遠隔操作や自動化(操作支援・安全機能)、フリートマネジメントなどのデータ活用、そして電動化や代替燃料(水素・ハイブリッド)といった環境対応です。さらに、構造軽量化や高強度化、AIを活用した創造的業務への移行のほか、シミュレーションによる実験・評価の効率化なども推し進めています。


溝渕
電動化の開発がスタートしたのは2018年頃ですね。
寺田
当時は「電動化は絶対にできないだろう」と言われていました。試験設備すら無い白紙の状態からのスタートだったので、技術を少しずつ立ち上げながら試験機をつくり、開発だけでなく生産やサービス、営業など全ての部門がゼロベースで協力して進めました。CO2削減という環境配慮ももちろんありますが、現場のお客さまにとって「早朝や夜間でも騒音を気にせず仕事ができる」「排気ガスが出ないため建屋の中でも作業ができる」という実用上のメリットが大きかったので、会社全体に「何とか実現したい」という想いがありました。
その結果、2023年12月に日本市場向け、世界初となる25トンクラスのフル電動ラフテレーンクレーン「EVOLT eGR-250N」、2024年11月に北米市場向け100トンクラスの「EVOLT eGR-1000XXL」の発売に結実しました。現在は大型モデル(70トンクラス等)や他機種への電動化拡大、バッテリー式動力ユニット「e-PACK」の展開など、次なる革新を進めています。
溝渕
電動化を推し進める一方で、内燃機関の技術革新も重要だと伺いました。
寺田
その通りです。クレーンが大型化すればするほど、バッテリーやモーターだけでは作業に必要なエネルギーを賄いきれず、高いエネルギー密度を持つ燃料と内燃機関の存在が不可欠になります。
エンジンメーカー等のサプライヤーと交渉し、世界的に厳格化する排出ガス法規やパワートレイン全体の進化に対応するためには、産業用エンジンや自動車エンジンの開発経験を持つエンジニアの知見が絶対に必要です。電動化を進める知見と、内燃機関を熟知した知見の両方が揃って初めて、最前線の製品開発が成り立つのです。

瀬戸内の穏やかな環境で暮らし、最先端の現場で世界と闘う。


溝渕
今後の展望についても教えてください。
藤木
今後は単なる警報・通知レベルの運転支援から、危険時に車両側が自律的に挙動へ介入する高度な安全制御へと進化させていきます。責任は非常に重いですが、目標値の策定からメカとの連動までゼロから一つずつ創り出し、自分で構築したシステムによって目の前の巨大な機械が安全に動く。その時に味わえる感動は、分業体制では決して得られない醍醐味だと思っています。
溝渕
最後に、エンジニアの方へのメッセージをお願いします。
藤木
地方への転職と聞くと「キャリアが停滞してしまうのではないか」と不安に思う方もいるかもしれません。しかし、タダノでは自動車以上の最先端技術を、車両全体という広い視野で丸ごと手掛けることができます。キャリアが停滞するどころか、安全と品質を担保しながら巨大な機械を動かすエンジニアとしての手応えが格段に増すと思います。
また、香川県は気候が温暖で災害も少なく、通勤の時にひどい渋滞に巻き込まれることもないため、生活の質が飛躍的に向上しました。両親の近くで暮らしながら、家族との時間を大切にしつつ、世界に向けてものづくりができる環境にとても満足しています。


寺田
近年は都市部からUターン・Iターンで入社するキャリア層も増えてきて、異業界のバックグラウンドを持つ仲間を歓迎する土壌が整ってきています。
地方で豊かに暮らしながら、世界にまだない新しい製品を生み出す。安全と品質を最優先に、自らが設計した巨大な機械で世界の建設現場の変革を生み出すものづくりの楽しさを、ぜひここ香川で一緒に味わいましょう。

転職支援サイト「リージョナルキャリア」にて、株式会社タダノの企業概要、および当社がお預かりしている株式会社タダノの求人一覧をご案内しております。

企業概要・求人情報はこちら


寺田 王彦

(株)タダノ 執行役員 技術開発本部長

愛媛県出身。大学時代は自動車部に所属。自動車と異なり、少人数で製品全体を見渡しながら開発を行える点に魅力を感じ、株式会社タダノに入社。ラフテレーンクレーンやトラッククレーンの製品開発を皮切りに、車両開発や新動力システムの先行開発などを歴任。現在は執行役員 技術開発本部長として、電動化・遠隔操作・自動化・安全機能強化やデジタルツインなどの最先端技術開発を統括し、中長期を見据えた技術革新を指揮している。

藤木 教彰

(株)タダノ 新動力システム開発部 車両開発ユニット

香川県出身。大学院でロボット工学を専攻後、大手自動車メーカーに入社。研究所や開発部門にて、先行研究から量産立ち上げ・評価までチームリーダーとして幅広く携わる。地元・香川へのUターンを機に株式会社タダノへ転職。現在は新動力システム開発部 車両開発ユニットにて、自動車業界で培った信頼性評価やシステムアーキテクチャの知見を活かし、クレーンの運転支援(ADAS)および高度安全制御領域の開発を担当している。

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