GROUP DISCUSSION2022.8.3

四国で働くからこそ、主体的に動き、自己成長できる。ー(株)総合開発・大久保氏、溝口氏ー

GROUP DISCUSSION2022.8.3

四国で働くからこそ、主体的に動き、自己成長できる。ー(株)総合開発・大久保氏、溝口氏ー

建設コンサルタント会社に勤務していた溝口さん。いずれ地元の香川に帰りたいと考えていましたが、実家の母が定年を迎え、自身も35歳となったのを機にUターン転職を開始。四国の土木建設業界で存在感を示す総合開発へ入社しました。
Uターンの実現により生活が安定し、精神的にもゆとりを得られるようになったばかりでなく、仕事の上でも任される領域が広がり、自己成長を感じていると語る溝口さん。その溝口さんの主体性や、ゼロから仕組みを構築する力を高く評価する、(株)総合開発の大久保 代表取締役。お二人に「四国ならではの働く価値」についてお話をお聞きしました。

うどん屋で麺をすするだけで「いいなあ」と実感する


佐々木
溝口さんのこれまでのキャリアを教えてください。
溝口
前職は建設コンサルタントに勤務していました。担当していたのは、トンネルや橋梁、道路といった土木構造物の設計前に実施する地質調査業務や、維持管理のために行う防災点検業務などです。ボーリング調査をしたり、山の中を歩いてルートマップを作ったり。これらのデータが土木事業全体に生かされます。
佐々木
転職を考えたきっかけは何だったのですか?
溝口
いずれは地元の香川に帰ろうと思っていましたのですが、35歳を前に、実家の母が定年を迎えたんです。ちょうど同じ頃、前職で出向の話が出まして。受ければ、山梨に2~3年は行くことになります。母が仕事を辞め、祖父母もまだ達者な内に、地元に戻った方がいいんじゃないかと思うようになり、転職活動を始めました。
佐々木
なぜ総合開発を選ばれたのですか?
溝口
たまたまリージェントのことを知り、近々大阪での個人相談会があると告知していたので、まずは行ってみようという感じでお邪魔しました。そこでエージェントの方と会ったのですが、とても丁寧で話しやすく、建設コンサルと測量会社に加え、総合開発の3社を提案してもらいました。その3社を吟味し、最終的に総合開発を選びました。
佐々木
大久保さんは溝口さんとの出会いを覚えていますか。
大久保
もちろんです。彼との面接のためだけに、大阪まで車を飛ばして駆けつけました。職務経歴を見た時、「これはウチに必要な人材だ」とピンときたので。熱意をしっかり伝えようと思いました。
溝口
私としては職種の違いに多少不安もあったんです。今までは土木事業における調査段階のみでしたが、総合開発に入れば設計も施工も守備範囲に入ってくる。自分にできるかなあと。
しかし、面接のためにわざわざ大阪まで来てくれて、熱意も感じました。面接の場に同席した方が私と同じくコンサルから総合開発に転職しており、調査によって得られた知識と経験が設計や施工にどう活用できるのか、具体的に教えていただきました。その人は私の入社後、直属の上司となる方だったので、そういう意味でも不安はかなり解消されました。


佐々木
入社してみて、どうでしたか?
溝口
違和感なく馴染ませてもらっています。最初は落石対策工の検討を行ったのですが、その上で必要な現地調査は前職でもやっており、すんなり入れました。設計や施工、あるいは維持管理といった仕事は初めてでしたが、今までは一部しか関わらなかった土木事業の全体が見えるようになり、「なるほど、調査結果はこういう形でつながるのか」と、面白さを感じます。
佐々木
地元で働くことになって、何か変化はありましたか?
溝口
やっぱり住みやすいですね。昼食時間になり、うどん屋に足を運んで麺をすする。それだけで「ああ、いいなあ、楽だなあ」と実感しますよ。また昨年、家も建てたんです。前職ではいわゆる転勤族だったので持ち家なんて頭の片隅にもありませんでしたが、生活の基盤ができると落ち着くものですね。

明確なゴールがないからこそ、自分で道を創っていける。


佐々木
大久保さんから見て、溝口さんの活躍はどのように映っていますか?
大久保
建設業界では今、ICTへの取り組みが大きな課題となっています。調査や測量などでも、ドローンを使えば広範囲が効率的に行えるんです。ウチもICT化をテーマに掲げてはいたものの、数年経っても形になっていませんでした。溝口さんが来たことをきっかけに、彼に仕組みづくりを担ってもらうことにしたのです。すると彼は、ほぼゼロからスタートして、わずか半年で一通り仕上げました。そのスピード感も素晴らしいけど、「ないものを作り上げる」力には驚きましたね。様々な分野から情報を集め、自社で使える形に落とし込める人材は、そう多くありません。いい意味で遠慮しないし、周囲に対して自分の考えをきちんと伝えることができる。とても貴重な人材です。
佐々木
総合開発にとって数年来の課題だったわけですから、溝口さんも大変だったのではありませんか?
溝口
明確なゴールがない中での取り組みだった、という点では大変でしたが、以前から建設業界のICT化については関心をもって調べていたりもしたので、それほどプレッシャーには感じませんでした。ゴールがないというのは、逆に言うと誰もやったことがないものなので、道筋を自分なりに組み立てていけます。そこはとても面白かったですね。
大久保
溝口さんは、業界誌なども熱心に目を通しています。誰に言われるわけでもなく情報を集め、必要だと思ったら周囲のみんなにも資料を配ったりしている。アンテナを張り、行動できるというのが彼の良さの一つだと思います。
ICT化を進めると補助金・助成金を受けることができ、以前ならそういった書類や資料の作成は全て私がやっていたのですが、溝口さんには「自分で調べてやってみて」と任せてみました。すると、私とはまた異なるやりかたで、きちんと必要な資料を作ってきたんです。自分で情報を収集して、判断して、行動するということができるのだな、と感じました。


佐々木
大久保さんから「自分の考えをきちんと伝えることができる」という評価がありましたが、溝口さんはそういうことを意識してやっているのですか?
溝口
いや、どちらかといえば苦手な方です。しかし伝えないとわかってもらえないし、わかってもらえなければICT化は浸透しませんから。30年先を見据えた時、自分も会社も変わっていかないといけないと思うんです。インフラの効率的なメンテナンスとか、建設業界におけるDXの導入、計画・調査段階から3次元モデルを導入して、設計・施工・維持管理まで情報共有するBIM/CIMの実践など、建設業界は大きく変わっています。それを私だけでなく、周囲の同僚にも知ってもらわないと。アンテナを張っていないと取り残される…という危機感はありますね。

トップとの距離が近いので、気軽に話せるし、考えも伝わる。


佐々木
職場の風土はどんな感じでしょう。
溝口
とてもいいですよ。気軽に意見も言わせてもらえるし。ベテランから20代まで幅広い年齢層がいるので、いろいろ価値観も違っているところもいいと思います。
経営層とも話しやすいです。ICT化の件を進める上で、「こういうことをやるために、高価だけどこういう機材が必要なんだ」と言うと、大体理解してもらえます。あまり「NO」と言われた記憶はないですね。
大久保
ICTに関してはお金がかかることがわかりきっていたので、変にケチって使えない仕組みになるよりは、一番いいものを選んで活用できた方がいいと考えていました。
他にも「自己研鑽のため勉強会に行きたい」「業務の質を高めるために資格を取りたい」といった要望を拒否したことはありません。社員からあれがやりたい、これが欲しいという要望が出てくるのは、会社の進化の第一歩ですから。ここで芽を摘んでしまうと、事業が停滞してしまいます。
佐々木
溝口さんはそういった、会社の価値観みたいなものを実感することがありますか。


溝口
度々感じます。やはり経営層との距離が近く、考えに触れる機会も多いので、自然と価値観も理解するようになります。前職では10年以上勤務して経営トップの方と直接話したのは1度あったかどうか。ここでは、それこそ休憩室に行けば会えますから。ICTや3次元設計の重要性に普段から触れるので、会社を発展させるため、また自己成長のため自分がどうすればいいか、自然と考えるようになります。
佐々木
プライベートでの変化はありますか?
溝口
妻は山口の出身で、東京や大阪に知り合いはいません。私も出張が多く、2~3ヶ月家を空けることもあり、しんどい思いをさせていたんじゃないかなと思います。実は「香川に帰るなら、早く帰ろう」と背中を押してくれたのは妻なんです。香川に戻り、実家や私の古くからの友人にも囲まれ、妻もだいぶ落ち着けたんじゃないでしょうか。

四国に戻って、仕事と主体的に向き合えるようになった。


佐々木
Uターンを考えるにあたって悩む人は大勢います。そういった方々に対し、四国ならではの働く価値を伝えたいと活動しているのですが、その点についてお二人はどのように感じられますか?
大久保
まず生活のしやすさ。温暖な瀬戸内地域はとても暮らしやすいところで、人生が充実すると思います。仕事面では、例えばウチのような会社だと、任される仕事の範囲が大きいというのはありますね。自分の仕事の成果が、会社の発展に直結するわけです。溝口さんがICTに取り組んでくれたおかげで、当社のICT戦略が起動し始めたようにね。役職は上がっても、自分一人じゃ何も決められない、あちこち稟議を回さないと事を起こせないというのは、あまり面白くないんじゃないですか。
私はそういったものは求めません。社員の自主性で自分たちの会社を良くしてくれるなら、経営者にとってこれほどありがたいことはない。会社の成長とともに自己実現できるのが、当社のような地方の企業で働く魅力じゃないでしょうか。
溝口
そうですね。どうせ働くなら、狭い自分の領域だけじゃなく、あらゆる範囲を刺激できるような働き方をしてみたいですよね。総合開発に来てICTに関わる中で「こういう資格を取りたい」とい気持ちが芽生えてきたんです。それで昨年「四国社会基盤メンテナンスエキスパート」を取らせてもらいました。以前は考えたこともなかったですけど。それだけ主体性が出てきた、自分が何のために働くのかを、しっかり考えるようになったのでしょう。
地元に帰ってきて、時間的にも精神的にもゆとりができました。そのおかげで「働く」ということを真正面からとらえられるようになったのではないかと思います。
ゆとりが生まれ、仕事に対する向き合い方が、より主体的になった。私にとっては、それが四国だからこそ得られる働く価値なのかもしれません。
佐々木
働くことにしっかり向き合ったおかげで、溝口さん自身が強くなったし、自信も持たれたのではないか。お話をうかがっていて、そんな感想を持ちました。
そういった手応えを得られる方を増やしていきたいですね。今日はどうもありがとうございました。

大久保 健吾

(株)総合開発 代表取締役

香川県出身。旧開発コンクリート社(現総合開発社)へ新卒入社。主に営業畑を歩み、関連事業の立上げを次々仕掛ける。2012年に常務取締役、2019年に代表取締役に就任。コンクリート事業部、セメント事業部、建設事業部、環境事業部から成るインフラ関連事業の責任者。3児の父でもあり「家庭が根っこ」の考えで早帰りを率先垂範。学生時代は野球一筋、地元の活力・地域の次世代のためにをライフワークに捉え新たな取組みを常に模索している。

溝口 秀治

(株)総合開発 防災事業部 技術営業部

香川県出身。大学院まで地質を専攻、新卒で全国展開する建設コンサルタント会社に就職。地質調査や防災設計・災害対策業務に従事していたが「いずれは故郷・香川へ戻りたい」という思いを抱く。複数選択肢があった中から、設計以降のプロセスにも携われる点と、共に働く仲間の魅力が決め手となり2019年に株式会社総合開発に入社。自治体発注の土木工事における現場管理、工法検討、施工後追跡調査、技術検討依頼等に対応し、新技術(ICT、ドローン等)の積極活用を牽引している。

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